しばらくして、課題を終わらせると、カルロッタは夕食を作りにキッチンに向かう。ボクは暇になって、自分の部屋へ向かう。数十分すると、テーブルの上には、夕食の香りが漂っていた。いい匂い。ボクは自分の椅子を引き、座る。 照明の下で、皿の上の料理がほのかに湯気を立てている。おいしそう!

「いただきます」

あいさつをして箸を握る。 シャーロットは、スプーンを握りしめながら、じっとゼリーを見つめている。さっきのゼリーか。カルロッタは優雅に紅茶を注ぎ、静かに香りを楽しんでいた。

「今日の料理、ちょっと変な味しないか?」

マリーが口に運んだスープを見つめ、眉をひそめる。

「え、そう?普通に美味しいけど」

マリンは気にする様子もなく、肉のソテーにフォークを刺している。

「俺の舌がおかしくなっただけか」

「それは十分あり得る」

ボクが笑いながら軽く肩をすくめると、マリーが頬を膨らませた。

「最低」

「これカルロッタが作ったものだよ。失礼でしょ」

「確かに」

その間にも、シャーロットはゼリーをスプーンですくいながら、じっと考え込んでいた。

「何か気になることでもあるんですか?」

カルロッタがシャーロットに問いかける。シャーロットは顔を上げ、問いに答える。

「……ナギア様って、お料理はなさるのでしょうか?」

突然の言葉に、テーブルの空気が一瞬止まる。

「えっ……?」

ウィルが思わず聞き返す。マリーもマリンも、しばらく沈黙する。

「……ナギア様が料理?」

「いや、それは想像できないねー」

マリンがスプーンを回しながら考える。

「でも、もしお作りになられるとしたら、どんな料理だと思います?」

シャーロットが興味津々に聞くと、マリーが腕を組んで真剣な顔をした。

「そうだな……切れ味が良さそうな料理?」

「なんだそれ」

ボクは思わず吹き出す。

「だって、ほら、ナギア様って鋭いし。包丁さばきもきっとすごいんじゃないかと」

「それは確かに……」

カルロッタは静かに微笑みながら、紅茶のカップを傾けた。

「では、もしナギア様の手料理を食べる機会があれば、皆さんは試してみますか?」

その問いに、一瞬の沈黙が訪れる。

「……食べるには食べるけど、命の保証はあるの?」

ボクが冗談めかして言うと、マリーとマリンが同時に吹き出した。

「それ、わかる!」

「確かに、味以前に緊張しそうだな」

すると、カルロッタがまた新たな情報を持ってくる。

「ナギア様はここに来る前、一人暮らしだったらしいですよ。自炊なさっていたとか。あとは、ここら辺においしいカフェがあるそうなので、そこに足をお運びになられたこともあるらしいです」

へえ、今度行ってみようかな。そのままどんどん会話は盛り上がっていき、いつのまにか夕食の時間は過ぎて行った。