マリーサイド
動物園の正門をくぐると、日差しが熱線のように背中を焼いた。ちゃんと入場料を払い、何かあった時の集合地点を再確認する。ディルタのメンバーは分かれて行動を始める。平日の動物園は来園者がまばらで、狙いを定めるにはもってこいだ。あそこのグループの奴にでもするか。周りに他のグループもなさそうだし。俺が目を付けた、夜行性動物の展示室に入っていくグループを、遠巻きに観察する。繁った木陰の下、雄雌別々に並ぶ扉の奥からは、夜のしじまを模した正面が漏れ出している。ここなら、抵抗されても目立たない。俺は、足音を忍ばせて後ろにぴったりと張り付く。
「ワッ!」
「わぁあ!?」
男子が女子を驚かして楽しんでいる。じゃあこのノリに合わせるか。女子が座って頭を抱え込んでいるのを見て、後ろから声をかける。
「ばあ♡」
背後から甘ったるく囁くと、驚いた彼女が顔を上げた瞬間を狙って、右足を振りぬく。だが、思ったほど吹き飛んでいかない。スタミナと素早さだけが取り柄の俺に、パワーまではない。
「逃げないと……!」
逃げる?そんなのできないに決まってるだろ。阿保か。女子が息を切らしながら立ち上がる。それを追いかけ、反射的に拳を振りぬく。コンクリ壁に頭からぶつかるまではいかないものの、数度の連打で彼女は再び膝をついた。
残る男二人、女子一人も同じ要領だ。標的を分析し、一人ずつ間合いに飛び込んでぁ寝際へ押し込む。拳が骨にあたり、鈍い痛みが腕に走る。まあ、これぐらいは慣れたものだ。何度も殴りつけ、三人まとめてダウンを奪ったころには、血の匂いと鉄の味が胸にこびりついていた。
「それじゃ、トドメを……」
そうつぶやいた瞬間、背後から落ち着いた声が響いた。
「マリー、そちらはもういいです。それよりも本命に急ぎましょう」
顔を上げると、いつもの無表情なカルロッタがいた。俺は右手で軽く頷き、拳を握りなおして歩き出した。進のいる場所へ。
動物園の正門をくぐると、日差しが熱線のように背中を焼いた。ちゃんと入場料を払い、何かあった時の集合地点を再確認する。ディルタのメンバーは分かれて行動を始める。平日の動物園は来園者がまばらで、狙いを定めるにはもってこいだ。あそこのグループの奴にでもするか。周りに他のグループもなさそうだし。俺が目を付けた、夜行性動物の展示室に入っていくグループを、遠巻きに観察する。繁った木陰の下、雄雌別々に並ぶ扉の奥からは、夜のしじまを模した正面が漏れ出している。ここなら、抵抗されても目立たない。俺は、足音を忍ばせて後ろにぴったりと張り付く。
「ワッ!」
「わぁあ!?」
男子が女子を驚かして楽しんでいる。じゃあこのノリに合わせるか。女子が座って頭を抱え込んでいるのを見て、後ろから声をかける。
「ばあ♡」
背後から甘ったるく囁くと、驚いた彼女が顔を上げた瞬間を狙って、右足を振りぬく。だが、思ったほど吹き飛んでいかない。スタミナと素早さだけが取り柄の俺に、パワーまではない。
「逃げないと……!」
逃げる?そんなのできないに決まってるだろ。阿保か。女子が息を切らしながら立ち上がる。それを追いかけ、反射的に拳を振りぬく。コンクリ壁に頭からぶつかるまではいかないものの、数度の連打で彼女は再び膝をついた。
残る男二人、女子一人も同じ要領だ。標的を分析し、一人ずつ間合いに飛び込んでぁ寝際へ押し込む。拳が骨にあたり、鈍い痛みが腕に走る。まあ、これぐらいは慣れたものだ。何度も殴りつけ、三人まとめてダウンを奪ったころには、血の匂いと鉄の味が胸にこびりついていた。
「それじゃ、トドメを……」
そうつぶやいた瞬間、背後から落ち着いた声が響いた。
「マリー、そちらはもういいです。それよりも本命に急ぎましょう」
顔を上げると、いつもの無表情なカルロッタがいた。俺は右手で軽く頷き、拳を握りなおして歩き出した。進のいる場所へ。


