冥沙は目をぱちくりと瞬きさせる。数秒して、にっこり笑って言った。

「ま、なんでもいいだろ!お前の力になってくれる優しい仲間なんだからよ」

いや、そういう問題じゃないでしょ。まあ、なんでもいっか。ぼくの家じゃないし。進くんは軽くため息を吐いた。

「ほら、どーこー言ってないで早よ行くぞ」

冥沙はそう言いながら進くんの背中をバシバシと叩く。

「いぃっでぇ!」

痛い……らしい。まあ、冥沙怪力だもんね。さっきのウザい刑務所に向かう。……さっきの頑固さん……鈴木凛音だっけ?が、受付にいる。鈴木凛音はこっちを鋭く睨み、フイとそっぽを向く。進くんは受付へ向かって言う。

「すみません」

「はい」

「仁藤透と面会をしたいのですが」

「承知致しました。そちらの椅子へお座りになってお待ちください。面会室が開き次第ご案内致します」

……ぼくたちと全っ然対応が違う。差別だ、差別差別。進くんが順番が来るまでずっと左手を右手で包み込み、下を向いていた。少し、不安げな、辛そうな表情を浮かべていた。一、二時間ほど待ち、進くんが面会室へ案内される。ぼくたちは椅子に座って進くんが戻ってくるのを待つ。

「あいつ、大丈夫か?さっき結構暗い顔してたけど」

「わかんない……。大丈夫だといいけど」

「そうじゃな」

30分程すると、耳と頬と鼻、目の周りが少し赤く染まった進くんが戻ってきた。ただ、進くんの顔に、苦痛の表情は浮かんでいなかった。陽眼も冥沙もにっこり笑う。

「ちゃんと話せたようじゃな」

「さ、家帰ろーぜ」

進くんは小さく頷いた。それを確認してぼくたちは椅子から立ち上がり、出口に向かって歩く。ぼくは一応鈴木凛音にぺこりとお辞儀をしてから外に出る。夕陽に照らされ、全員の顔が赤く染まっている。もう夕方か。時間が経つのは早いものだ。進くんの家に戻り、扉を開けた瞬間、中から進くんの弟くんが走り出てきて進くんに飛びつく。

「っ!」

進くんが驚いて少し後ろによろめくと、進くんの弟くんたちは無邪気に笑って言った。

「おかえり、にいちゃん!」

「おかえりなさい!」

「あのさ、無理してたんだよね?進」

「兄さんは我慢しすぎ!」

「でも、いつもありがと」

進くんの目が大きく見開かれる。進くんは満面の笑みを浮かべる。

「こっちこそ、いつもありがとな」