「どうしたのですか?少しばかり騒々しいように思えたのですが……。何かありました?」

上の人が来てくれてよかった。少しは話が通じる人だと思いたい。

「あのですね、受刑者のお子さんについて話すために受刑者さんと面会したくて……」

……いや、この言い方だと誤解を与えるかもしれない。変質者に思われるかもだし。陽眼も呆れた目で見てる。

「すみません、言い方を間違えました。ぼくは日の出中の教師なんですけど、受け持っているクラスの一人が今家にも学校にもいないんです。なので、手がかりを探していて、家族ならワンチャン知ってるんじゃないかと思って……」

「だから……!」

また突っかかってくるんだ、受付の奴。……と、男の人が受付の奴を制す。

「鈴木さん、大丈夫ですよ。お二方からは私がお話を聞きますから、鈴木さんは仕事に戻ってください」

……鈴木さん?受付の人が鈴木さんと呼ばれている。よく見ると、しっかり名札が付いていた。鈴木凛音……。意外と可愛らしい名前。性格と全然似つかない名前だ。ぼくたちは奥に案内される。鈴木さんが見えなくなってから、男の人が口を開く。

「すみません、あんな雰囲気じゃ喋るのも億劫になってしまいますよね。緊急のようですし、面会を許可しますよ。他の人のなんか言われたら、警察よりあの2人のほうが暇そうだったから捜索してもらっている、とでも言っておきますので……」

……気遣いだろうし、すごく良い言い訳なんだけど、遠回しに馬鹿にされているように感じて、謎の不快感を覚えた。

「ところで、お会いしたい受刑者って……」

「仁藤さんです」

「仁藤さん……。仁藤透さんですか?」

「あ、そうです」

「こちらですね、ついてきてください」

面会室に通され、椅子に座って少し待っていると、奥のドアから男の人が出てきた。

「こんにちは、朝倉先生ですか。お話は聞きました」

そう言いながら、男の人は向かいの椅子に座る。

「はい。えっと……仁藤透さんですか?」

「はい。今日は来てくれてありがとうございます」

「いえいえ、とんでもない。今日は一つお伺いしたいことがあってきたのですが」

「なんでしょうか?」

「進くんが、学校と家以外に行くとしたらどこですか?」

透さんは、少し固まって何か、考え込んでいる。…なんか、目つきとかは怖いけど、優しそうな人に見えるんだよなぁ。なんで捕まっちゃったんだろ……。と、透さんが口を開く。

「可能性が高いところなら、近くの漁港とかだと思います。漁港なのにあまり整備されてなくて自然がそのまま残っているのが好きだとか。一番大きな岩がお気に入りだそうです。そこにいっても見つからなかったら、思いつくところがないです」

……見つからなかったら?……進くんが勝手にどっか行っちゃったことに気づいてたのかもしれない。……頭いいなぁ。うらやましい限りだ。

「ありがとうございます」

透さんにそういって、ぼくたちは刑務所を出た。入り口で、思い切り伸びをする。

さて、進くん、探しに行くかあ。