「カナメ君!」

 天の川に残されたアオイは一人、下に叫ぶしかなかった。

「ごめん、私のせいで、ごめんなさい。ごめんなさい!」

 唇が真っ青になって、頭がどんどんとぼうっとしてくる。

「こんなことになるなら言っておけばよかったんだ…。あの時も同じように思ったのに…。」

 去年の七夕に想いをはせる。生きてるってなんて特別なことなんだろう。

『…カナメ君に会いたい。会って最後に思いを伝えたい!!』

 あの時と同じように大きな風が吹いた。星空がキンッと輝いた気がした。

「アオイ…?」

 その声にばっと振り向く。見ると後ろの木の上に青白く光り輝く一人の少年がいた。

「カナメ君…。」

 殆ど倒れこむようにカナメはアオイに抱きついた。

「アオイ…いや、織姫。俺、君と同じように帰ってきたよ。天の川で願いを持って死んで、彦星になった。だから今度こそ想いを伝える。」

 アオイはぼろぼろと泣いた。生きててくれた。カナメ君がまた来てくれた。

「うんっ…。」
『大人になったら俺と結婚してくれますか。』

 差し出された手をグッと握り返す。

「勿論。そのために戻ってきたんだから。」

 そうアオイが答えた瞬間に短冊は消えた。
 ゴーンと十二時を告げる鐘が鳴った。