「カナメ君。」
「ああ、ここだね。」
一年前に君が死んだのは
「短冊はどっちに飛んで行った?」
「もう少し奥かな。」
進むにつれて、気温が下がっていくような気がした。真夏なのに冷や汗をかく。
「この辺から感じる。」
「…なにを?」
「願いの力。」
アオイ…間違えた、織姫様が言うには強い願いを込めれば込めるほど、願いは叶いやすくなるらしい。
織姫だからそれも感じ取れるとか。
「あっそう…。」
「織姫にいうことですかあ⁉」
「早くしろよ。日付変わるぞ。」
相も変わらずぶっきらぼう。面倒だな。
「じゃあお願いを叶えよう。」
「やっと織姫っぽい。」
「うるさいな、もう。」
アオイはすっと右手を挙げた。きれいな字が書ける右手。
「天の音聞きし我が主。一願い叶え。星々よ舞え。」
夜空にはたくさんの星が咲いていた。
「…おわった?」
「うん、見つけた。」
すっと指をさす。アオイが死んだ理由であり、アオイが此処にいる理由。
なんの因果関係だか。
「崖?」
「これは、また凄いところに…。」
崖も崖。
落ちたらひとたまりもない。というか落ちたくもない。
短冊は、風で飛ばされるぎりぎりのところに引っかかっていた。
「行くか。」
「え?ほんとに言ってる?」
「? お前のためだから。」
この無意識女たらし。なんて口が裂けてもいえない。
崖っぷちにしゃがみ込みしたをのぞく。
怖。
よく見ると薄暗い中にひらひらと何かがある。
あれか。
「あった。」
「ほんと?」
「危ないから、離れてろよ。」
「…え?」
こいつ…。と思いながらも、一応大人しく下がる。
カナメが思いっきり手を伸ばす。ギリギリ届かない。
「とど、かん…。」
「危ないよ。もっとほかの方法で…。」
「あっ。」
指先が短冊に触れた。
すると、その拍子に引っかかっていた短冊が外れてしまった。
「…っ!」
勢いよく体をぐんっと前にそらしたカナメは、短冊をキャッチした。自分の足場と引き換えに。
体勢を崩したカナメはそのまま崖に落ちてしまった。
「カナメ君!」
「…!」
本当に危ないとき、人間は声なんて出せないことを初めて知った。何も聞こえない。あ、そうか。
死ぬ?
「カナメ君!」
アオイが反射的に腕を掴んだ。だが、それも長くはもたない。
「…アオイっ、手ぇ離せ!」
「カナメ君、そんなこと言わないでよ!馬鹿!」
ぎりぎりの極限状態。それがどれだけ続いたかは正直、誰もわからなかった。
というのも、アオイの腕力的なものはカナメを支えることはできても、引き上げるほどの力がないのだ。
けれどあんまり強く腕をつかむから、振りはらおうとすると、アオイごと落ちてしまう可能性がとても高い。
「離せよ…。」
「やだあ、死なないでよ…!」
「っ…。」
カナメだって死にたいわけじゃない。
あれ…。
「アオイ…今なにしてるっけ?」
「は?」
「…は?俺、何言って…。」
いや、これはもしかしたら…。
「アオイのその体が、『願いを叶えるため』にあるんだとしたら…。」
「!」
「短冊を見つけることで願いが叶い、俺の中の『願いが叶えるため』に必要のないアオイ、織姫は消えていく…?」
「馬鹿。なんでそういうところだけ勘がいいの?」
「噓つき。」
「っつ…!」
腕が痛い。死にそう。
「アオイ…。」
「何?」
もう最終手段使うか。アオイにも会えたし。
「俺、アオイのこと好きだよ。」
一瞬でも力が緩めば自分だけ、落ちれる。
「ほんと、会えてよかった。」
アオイの力が緩んだ。
「じゃあね。」
「え…?」
ダンッ
崖を強く蹴ったカナメは、真っ逆さまに落ちていった。
「ああ、ここだね。」
一年前に君が死んだのは
「短冊はどっちに飛んで行った?」
「もう少し奥かな。」
進むにつれて、気温が下がっていくような気がした。真夏なのに冷や汗をかく。
「この辺から感じる。」
「…なにを?」
「願いの力。」
アオイ…間違えた、織姫様が言うには強い願いを込めれば込めるほど、願いは叶いやすくなるらしい。
織姫だからそれも感じ取れるとか。
「あっそう…。」
「織姫にいうことですかあ⁉」
「早くしろよ。日付変わるぞ。」
相も変わらずぶっきらぼう。面倒だな。
「じゃあお願いを叶えよう。」
「やっと織姫っぽい。」
「うるさいな、もう。」
アオイはすっと右手を挙げた。きれいな字が書ける右手。
「天の音聞きし我が主。一願い叶え。星々よ舞え。」
夜空にはたくさんの星が咲いていた。
「…おわった?」
「うん、見つけた。」
すっと指をさす。アオイが死んだ理由であり、アオイが此処にいる理由。
なんの因果関係だか。
「崖?」
「これは、また凄いところに…。」
崖も崖。
落ちたらひとたまりもない。というか落ちたくもない。
短冊は、風で飛ばされるぎりぎりのところに引っかかっていた。
「行くか。」
「え?ほんとに言ってる?」
「? お前のためだから。」
この無意識女たらし。なんて口が裂けてもいえない。
崖っぷちにしゃがみ込みしたをのぞく。
怖。
よく見ると薄暗い中にひらひらと何かがある。
あれか。
「あった。」
「ほんと?」
「危ないから、離れてろよ。」
「…え?」
こいつ…。と思いながらも、一応大人しく下がる。
カナメが思いっきり手を伸ばす。ギリギリ届かない。
「とど、かん…。」
「危ないよ。もっとほかの方法で…。」
「あっ。」
指先が短冊に触れた。
すると、その拍子に引っかかっていた短冊が外れてしまった。
「…っ!」
勢いよく体をぐんっと前にそらしたカナメは、短冊をキャッチした。自分の足場と引き換えに。
体勢を崩したカナメはそのまま崖に落ちてしまった。
「カナメ君!」
「…!」
本当に危ないとき、人間は声なんて出せないことを初めて知った。何も聞こえない。あ、そうか。
死ぬ?
「カナメ君!」
アオイが反射的に腕を掴んだ。だが、それも長くはもたない。
「…アオイっ、手ぇ離せ!」
「カナメ君、そんなこと言わないでよ!馬鹿!」
ぎりぎりの極限状態。それがどれだけ続いたかは正直、誰もわからなかった。
というのも、アオイの腕力的なものはカナメを支えることはできても、引き上げるほどの力がないのだ。
けれどあんまり強く腕をつかむから、振りはらおうとすると、アオイごと落ちてしまう可能性がとても高い。
「離せよ…。」
「やだあ、死なないでよ…!」
「っ…。」
カナメだって死にたいわけじゃない。
あれ…。
「アオイ…今なにしてるっけ?」
「は?」
「…は?俺、何言って…。」
いや、これはもしかしたら…。
「アオイのその体が、『願いを叶えるため』にあるんだとしたら…。」
「!」
「短冊を見つけることで願いが叶い、俺の中の『願いが叶えるため』に必要のないアオイ、織姫は消えていく…?」
「馬鹿。なんでそういうところだけ勘がいいの?」
「噓つき。」
「っつ…!」
腕が痛い。死にそう。
「アオイ…。」
「何?」
もう最終手段使うか。アオイにも会えたし。
「俺、アオイのこと好きだよ。」
一瞬でも力が緩めば自分だけ、落ちれる。
「ほんと、会えてよかった。」
アオイの力が緩んだ。
「じゃあね。」
「え…?」
ダンッ
崖を強く蹴ったカナメは、真っ逆さまに落ちていった。

