『アオイ~?』
「えっ、違うの?」
『もうアオイじゃないです~。お・り・ひ・め。』
「ハァア⁉」
この発言にはさすがのカナメでも驚いた。
織姫⁉アオイが⁉
『私は「七夕」に「天の川」で恋をしながら死んだの。そしたら「織姫」になったの。ね、わかったでしょ?』
「え、いや全く分からん。」
焦りまくっているカナメを見てケラケラと笑うと、アオイはにっこりと微笑んだ。
ああ、懐かしい。アオイだ。
「え、恋をしながら死んだ?お前好きな人いたのか。」
『あ、あー…まあね!』
アオイからすれば勿論「…そっか。」とか「え⁉誰だよ?」みたいな反応が欲しかった。
でもカナメは
「お前に『好き』を感じることができるとは思ってなかった。」
と言った。
なんだよ、こいつ。
『鈍感め。』
「は?」
『噓噓。』
ニヤリと笑ってカナメを見つめた。
なんだよ、こいつ。
「てか、お前なんで此処に…。」
『まあ、細かいことは置いといて。カナメ君はさっき「アオイの願いを叶えたい」と言ってくれたね。』
「細かいか…?まあ大体、ニュアンス的にはそんなこと言いましたね。」
『じゃあ叶えよう。』
「は?できるの?」
『ふっふーん。私は「織姫」だぞ。人々の願いを叶えるぐらいなんてことない。』
自慢げに笑う。
少し鼓動が速くなった気がした。
こいつといるとどうも調子が狂う。
にしても…
織姫になった。そこがどうにも引っかかる。
童話の中で織姫は、天の川の水が一番ひいたときに彦星と会う為にやって来る。
カナメが聞いたことのある話の流れで行くと…。
今が丁度九時。
織姫は彦星と会う。アオイが織姫。アオイと出会ったのが彦星。出会ったのが俺、カナメ。
でも織姫と彦星って恋人関係。若しくは夫婦だった気が…。
そうか、ここでもう一つおかしいのか。
さらにもう一つ。
童話の中では織姫が人々の願いを叶えるなんてシーンはない。
そうすると童話が間違っている。…もしくは
アオイが噓をついている。
いや、見え張ってるな。
最後に一つ。
織姫と彦星は無論、日付が変わったら天の川の水が満ちてしまうから直前に離れ離れ。
アオイが織姫、カナメが彦星(役)としたら、アオイが此処にいられるのは後約三時間。
何としてでもアオイの願いを叶えないと。
ってかそれにしても、なんでこんなに俺は必死になって…?
いや、そんなのはどーでもいい。
「はあー、で、願いは何ですか?織姫様。」
『それがね、二つあるんだ。』
「欲張りだな。」
『一つはとっても簡単。だけどとっても難しい。これはカナメ君しか出来ない。』
「?」
『二つ目はとっても大変。でもこれは二人で出来る。』
「へえ。」
『さ、どっちをやってくれる?』
アオイのキラキラとした目線を無視して、カナメはぱっと言った。
「どっちもに決まってるだろ。」
『…それは。』
アオイは顔を着物で覆った。そして小さな声で
『ありがと。』
とだけ言った。
タイムリミットはあと三時間。
「上等だ。大変なほうからやる。」
『やる気満々だねー、それじゃ本題。去年七夕祭りに二人で行ったでしょ。その時に無くしてしまった短冊がどうしても気になってて。一緒に探してくれない?』
「見つかるかどうかなんてわかんないぞ。」
『いや、絶対にある。なくなってたら私は此処にこれてない。』
アオイの絶対的な口調と妙な自信。
へえ、色々わかってきた。
にしても…
楽しみだな、アオイとまた歩けるというのは。
空を見上げると星が光っていた。
宝石みたいな輝き方、ビー玉みたいな反射の仕方。
「このあたりだよ。アオイが見つかったのは。」
七夕祭りの賑やかさを差し置いて、薄暗い木陰に二人は足を踏み入れた。
歩いていてわかったことだがどうやらアオイはほかの人に見えないらしい。
「死ぬっていうのは退屈か?」
カナメの冷ややかな視線。天の川から引き上げられた時のアオイの姿を思い出すような。
『どうかな。人それぞれだろうし。…けど。』
大きな風が吹いた。あの時と同じような。
『おぼれたときは寒かった。もう死んじゃうって時に、カナメ君の声が聞こえてきたんだよね。まあ、少なくともその瞬間だけは、温かかったよ。』
「そう…。」
『カナメ君泣いてる?』
「は?泣く訳ないし、意味分からん。」
泣いてない。泣く意味なんてない。
「早く探すぞ。完全に暗くなってからだと俺も溺れる。」
『そーだね。』
ま、悲しくなかったかと言えば嘘になる。けど意地でも言ってやるもんか。
「えっ、違うの?」
『もうアオイじゃないです~。お・り・ひ・め。』
「ハァア⁉」
この発言にはさすがのカナメでも驚いた。
織姫⁉アオイが⁉
『私は「七夕」に「天の川」で恋をしながら死んだの。そしたら「織姫」になったの。ね、わかったでしょ?』
「え、いや全く分からん。」
焦りまくっているカナメを見てケラケラと笑うと、アオイはにっこりと微笑んだ。
ああ、懐かしい。アオイだ。
「え、恋をしながら死んだ?お前好きな人いたのか。」
『あ、あー…まあね!』
アオイからすれば勿論「…そっか。」とか「え⁉誰だよ?」みたいな反応が欲しかった。
でもカナメは
「お前に『好き』を感じることができるとは思ってなかった。」
と言った。
なんだよ、こいつ。
『鈍感め。』
「は?」
『噓噓。』
ニヤリと笑ってカナメを見つめた。
なんだよ、こいつ。
「てか、お前なんで此処に…。」
『まあ、細かいことは置いといて。カナメ君はさっき「アオイの願いを叶えたい」と言ってくれたね。』
「細かいか…?まあ大体、ニュアンス的にはそんなこと言いましたね。」
『じゃあ叶えよう。』
「は?できるの?」
『ふっふーん。私は「織姫」だぞ。人々の願いを叶えるぐらいなんてことない。』
自慢げに笑う。
少し鼓動が速くなった気がした。
こいつといるとどうも調子が狂う。
にしても…
織姫になった。そこがどうにも引っかかる。
童話の中で織姫は、天の川の水が一番ひいたときに彦星と会う為にやって来る。
カナメが聞いたことのある話の流れで行くと…。
今が丁度九時。
織姫は彦星と会う。アオイが織姫。アオイと出会ったのが彦星。出会ったのが俺、カナメ。
でも織姫と彦星って恋人関係。若しくは夫婦だった気が…。
そうか、ここでもう一つおかしいのか。
さらにもう一つ。
童話の中では織姫が人々の願いを叶えるなんてシーンはない。
そうすると童話が間違っている。…もしくは
アオイが噓をついている。
いや、見え張ってるな。
最後に一つ。
織姫と彦星は無論、日付が変わったら天の川の水が満ちてしまうから直前に離れ離れ。
アオイが織姫、カナメが彦星(役)としたら、アオイが此処にいられるのは後約三時間。
何としてでもアオイの願いを叶えないと。
ってかそれにしても、なんでこんなに俺は必死になって…?
いや、そんなのはどーでもいい。
「はあー、で、願いは何ですか?織姫様。」
『それがね、二つあるんだ。』
「欲張りだな。」
『一つはとっても簡単。だけどとっても難しい。これはカナメ君しか出来ない。』
「?」
『二つ目はとっても大変。でもこれは二人で出来る。』
「へえ。」
『さ、どっちをやってくれる?』
アオイのキラキラとした目線を無視して、カナメはぱっと言った。
「どっちもに決まってるだろ。」
『…それは。』
アオイは顔を着物で覆った。そして小さな声で
『ありがと。』
とだけ言った。
タイムリミットはあと三時間。
「上等だ。大変なほうからやる。」
『やる気満々だねー、それじゃ本題。去年七夕祭りに二人で行ったでしょ。その時に無くしてしまった短冊がどうしても気になってて。一緒に探してくれない?』
「見つかるかどうかなんてわかんないぞ。」
『いや、絶対にある。なくなってたら私は此処にこれてない。』
アオイの絶対的な口調と妙な自信。
へえ、色々わかってきた。
にしても…
楽しみだな、アオイとまた歩けるというのは。
空を見上げると星が光っていた。
宝石みたいな輝き方、ビー玉みたいな反射の仕方。
「このあたりだよ。アオイが見つかったのは。」
七夕祭りの賑やかさを差し置いて、薄暗い木陰に二人は足を踏み入れた。
歩いていてわかったことだがどうやらアオイはほかの人に見えないらしい。
「死ぬっていうのは退屈か?」
カナメの冷ややかな視線。天の川から引き上げられた時のアオイの姿を思い出すような。
『どうかな。人それぞれだろうし。…けど。』
大きな風が吹いた。あの時と同じような。
『おぼれたときは寒かった。もう死んじゃうって時に、カナメ君の声が聞こえてきたんだよね。まあ、少なくともその瞬間だけは、温かかったよ。』
「そう…。」
『カナメ君泣いてる?』
「は?泣く訳ないし、意味分からん。」
泣いてない。泣く意味なんてない。
「早く探すぞ。完全に暗くなってからだと俺も溺れる。」
『そーだね。』
ま、悲しくなかったかと言えば嘘になる。けど意地でも言ってやるもんか。

