目線を一切逸らさずに言ったので、梨々子は、ビクッとたじろぐ。
 まさか言い返してくるとは思わなかったのかもしれない。しかし梨々子は悔しいのか、最後にこう言ってくる。

「そこまで自分の作る料理に自信があるのなら、一度食べてみたいものですわ。そうだ。伊織お義兄様も呼んで、ご馳走していただけます? もし美味しかったら、謝罪してさしあげますわ」

 どうしても上から目線の梨々子。相手にしないのが一番なのだが、この手のタイプは無視したところで神経を逆撫でるだけだろう。

「……分かりました」

 仕方がないので、結羅は承諾することにする。自分の料理に自信があるわけではないが、それで気が済むのなら出すしかないだろう。
 もし気に入らなかったとしても、今後も作るわけではない。聞き流しておけばいいだろうと結羅は判断した。虎太郎は不満そうだったが。
 そして客間に梨々子と伊織の分を用意する。茜のおかわりの分があるので、すぐに用意は出来た。

「ちょっと、何で私のおかわり用をあげないといけないのよ!? こんな奴らに」
「ごめんね、茜。おかわり分は、まだ多少はあるから。それでも足りなかったら、別で作るから」

 茜は自分の分を取られてしまったので文句を言っていた。頬を膨らませる茜を宥めながら、作った料理をテーブルに置く。
 今日はサバの味噌煮。里芋の揚げ出し。だし巻き。ほうれん草のおひたし。シーザーサラダなど。
 伊織にも声をかけたが、来ないと思っていた。一緒に食事はしないと思っていたからだ。
 しかし姿を現せる。不機嫌ではあったが、黙って座ってくれた。
 梨々子は当然のように伊織の隣りに座っていたが。それぞれに料理が配り終わると、伊織は一口だけ口に運んでくれた。