「えっ?」
「誰のためとか関係ない。自分の気持ちに対して、正直に生きた方がお前らしい。茜にとって、今一緒に居たい相手は誰だ?」

 衝撃的なことを言われて、茜の心は大きく揺れる。

(私が……一緒に居たい相手は)

 茜にとって1番先に頭の中に浮かんだのは、姉の結羅だった。
 幼い頃から、どんなに辛いことや怖いことがあっても、傍に居てくれた。結羅が守ってくれたから、自分は元気で何事もなく過ごせているのに。
 例え迷惑をかけたとしても……。

「私は……お姉ちゃんと一緒に居たい」

 泣きながらも茜は正直に答えた。それが本当の気持ちだったからだ。
 そうしたら匠は強引に茜の腕を掴み、母親から引き剝がした。

「ちょっと、何するのよ!?」

 母親が驚いて怒鳴るが、匠は茜を後ろに下げるとギロッと睨みつける。

「これは契約違反だ。これ以上、彼女に近づくなら龍崎家が容赦はしない。我々が全力でお前らを叩き潰すが、それでも構わないのだな?」
「ひっ!?」

 匠の目を青く変化しており、その空気はピリッと痺れるようだ。

「お願いします。茜をそのまま私に預からせて下さい」

 結羅は、それ以上匠を刺激しないように頭を下げて頼んだ。さすがに母親も絶対的な権力のある龍崎家を敵にするわけにはいかない。
 匠の迫力にもビビッてしまったようだ。

「こ、こんなことして、何の得があるっていうのよ!? どうなっても、私は知りませんからね」

 そう言うと、母親はそそくさと逃げるように去ってしまう。
 結羅は居なくなったことを確認すると、ホッと胸を撫で下ろす。そうしたら、茜が泣きながら結羅に抱きついてきた。