その時だった。麻美が席を立つと泣きながら、茜に対して
「もういいの。私が出しゃばって止めたりしたから白石さんが腹を立ててしまったと思うの。私が悪いの……ごめんなさい」
 頭を下げて謝罪をしてきた。これに対して怒ったのは取り巻きの子達だった。

「ちょっと、麻美ちゃんが謝ることはないよ。やったのは、白石さんだし」
「そうだよ。白石さんが謝るべきじゃん」

 まるで、こちらに非があるような言い方をされた。その現場を見ていて、一緒にイジメていたはずの取り巻きさえ、茜に罪を擦り付けてくる。
 冗談じゃない。

「ちょっと、ふざけたことを言わないでよ。そもそも、それをやっていたのは」

 茜が必死に説明をしようとすると、麻美は近づいてきて、ギュッと抱き締めてきた。

「えっ?」と、茜が驚くと目尻に涙を溜めながら、うるうるする麻美。
「白石さん、本当にごめんなさい。きっと悩みがあって辛かったんだね。それで面白くなくて、あんなことをしちゃったんだよね? 私が、ちゃんと話を聞いてあげればよかったのに」
 茜を気遣い、庇うような言い方をしてくる。

「調子乗っているなよ。あんた1人、学校辞めさせることぐらい簡単なんだから。大人しく私の奴隷になったら? おバカな貧乏人さん」

 麻美は周りに気づかれないような小声で。茜を陥れる言葉を吐いてくる。
 その言葉にカッとした茜は無理やりを引き剝がすと、思わず麻美の頬を思いっきり叩いてしまった。
 ハッと思った時は遅かった。本当は叩くつもりはなかった。
 しかし濡れ衣を着せられたあげく、あまりにもバカにされた言い方をしてきたのだ。
 そうなったら腹が立って仕方がなかった。だが、それが罠とは思わなかった。
 麻美は叩かれた頬を触りながら、ぽろぽろと泣き始めた。そうしたら取り巻き達だけではなく、周りのクラスの子達まで茜を批判してきた。