「ご、ごめんなさい。もうお金はなくて」
「はっ? 噓を言ってないで、さっさと財布出せよ」

 そう言うと、麻美は彼女のカバンから財布を奪い取ってしまう。そこから千円を抜き取りと、財布を地面に捨てた。
 クラスでは豹変して、まるで別人だった。

「うわぁ~千円ぽっち。貧乏人。これだと大したのが買えないじゃん」
「マジ~最悪。お洒落と遊ぶのにお金かかるのに」
「親からくれるお小遣いだと、全然足りない。厳しいし。もう少し持って来てよ」

 そう言いながら岡本莉子を責めていた。自分達のお小遣いが足りないために、彼女から金銭を奪い取っていたようだ。
 岡本莉子は目尻に涙を溜めながらガタガタと肩を震わせている。これではイジメだ。

「ちょっと、あんた達。何をやっているのよ!?」

 茜は我慢が出来ずに、麻美達の前に出てしまう。真っ直ぐで気が強い茜は、こういうことをする奴を見過ごすことは、どうしても出来なかった。
 そうしたら麻美は茜だと気づくとコロッと豹変する。

「なんだ~誰かと思ったら白石さんじゃん。どうしたの? こんなところで、会うなんて偶然~」

 まるで、何もなかった態度で接してきた。こうやって性格を使い分けているようだ。
 しかし茜にはそれは通用しない。全部オーラでお見通しだからだ。

「隠しても無駄よ。あんたの性格なんて、もうとっくに分かっているし」

 茜がそう言うと、麻美は舌打ちをしてきた。そうしたら、彼女の目つきが変わった。

「なんだ~いつ気づいたの? それよりも、また根暗の前野さんと一緒に居るの? 白石さんって変わっているのね」

 まるで彩友美と居ること自体がおかしいと言いたげに笑ってくる。正体がバレたと分かると、素に戻ったようだ。
 彩友美は黒髪で黒縁眼鏡をかけているため、地味目に見られやすい。勉強とオカルトのことばかり考えているのもあり、人と群れることは好きではない。