「何やっているのよ！？　私はそこまで命令していないわよ」
「……茜！？」

　容赦なく叩いたので、結羅の方が驚いてしまった。匠のまさか自分がたたかれるとは思わなかったので目を大きく見開いていた。

「……何故、俺を叩いた？」
「やり過ぎたから叩いたの。あんたバカじゃない？　青龍だが何だか知らないけど、やり過ぎたら罪になるの。それぐらい覚えておきなさいよ」
「いや……だからって」

　匠が何か言い返そうとしたら、ガヤガヤと人の声が聞こえてきた。パトカーのサイレンの音まで聞こえてくる。銃声の音で誰かが通報したのかもしれない。

「まずいな。お前ら、さっさと逃げるぞ」
「でも……どうやって！？」

　今出ると見つかるかもしれない。茜と結羅が動揺していると虎太郎の声が聞こえてきた。

『とりあえず、また裏口からカラオケ店に入れ。そこから様子を見て、出ればいい』
「分かったわ」

　とりあえず元居たカラオケ店まで行って、中に入った。隙を中に居た黒色のスーツ姿の男達は虎太郎が倒してくれたようだ。
　客のふりをして様子を見ながら、そのまま外に出た。何とかバレずに逃げ切ると、一台の黒色のリムジンが目の前に現れる。中から出てきたのは伊織だった。

「乗れ。このままだと警察に捕まるぞ！？」

　結羅と茜は慌てて車の中に入った。匠も一緒に。車は走り出したのだが驚いたことに、運転席にも匠が居るではないか。

「どういうこと！？」

　茜が叫ぶと、後から乗ってきた匠は後部座席に腰を下ろすと、目を閉じて『解！』と、唱える。