その目は正気ではない。変質者みたいにギラギラしていて、操られて状態だ。
 よく見ると呪詛が心臓まで繋がっているのが見えた。これは、下手に除霊したら彼が死ぬかもしれない。
 動揺する結羅と違って隼人はニヤニヤと笑う。

「どうやら、攻撃が出来ないようだな? これは丁度いい。このまま連れて行くとするか」

 結羅は、本当にピンチに陥る。このままでは捕まってしまう。虎太郎は、まだ中にいるようだ。まだ追い払ってくれているのだろう。

(どうしよう……)

 隼人が怯える結羅の腕を掴もうとしようとした、その時だった。

「お姉ちゃん」

 茜の呼び声が聞こえてきた。慌てて見ると、茜は匠と一緒に居る姿が見えた。
 どうやら間に合ったようだ。

「な、なんだ?」
「よくもお姉ちゃんに手を出そうとしてくれたわね。絶対に許せない」

 驚く隼人と違って茜は強気だった。そして、こちらを指差して
「匠。やっておしまい!」と、指示を出した。

 それには匠も驚いてしまう。まさか命令されるとは思わなかった。
 姉を迎えに行くと言って、強引に連れて来られただけだったからだ。

「はっ? 何で俺が?」
「私が攻撃出来るわけがないでしょう!? 文句言ってないで、さっさとやって。あんた、私のボディーガードでしょ? じゃないと、あんたの主人に言いつけるわよ」
「俺を顎で使うな!?」

 なんとも理不尽な命令だろうか。しかし主の命令もあるので言うことを聞かないといけない。
 匠はチッと舌打ちをする。そして目を青く変わると、一歩ずつ黒色のスーツ姿の男達に近づいていく。その霊力は青く強力。まるで龍がとぐろを巻いているように見えた。