「どうしたの? 早く入ってよ」
「えっ? あ、ごめんなさい」

 他の女性生徒達に言われて、結羅も強引に中に入らされた。大部屋なだけはあって、複数の人が座れるスペースがある。
 その中に居たのは数人の男性と女性達だった。ただ普通の合コンではないのは、すぐに分かった。
 呪詛にかけられた人が数人混じっている。特にソファーのど真ん中で偉そうにふんぞり返っている金髪の男性から強力な呪詛の気配がした。よく見てみると、彼の右腕に黒色の数珠が付けているではないか。

(これは、黒石神社の数珠だわ!?)

 間違いないだろう。お守りより強力な呪詛の気配が染み込んでいた。
 その男性は、結羅を見るとニヤリと笑った。ゾクッと背筋が凍るような恐怖が襲ってくる。

「さあさあ、座って。合コンを始めるから」

 美香は明るく、そう言って結羅と樹を座らせる。そして勝手に合コンが始まってしまった。完全に逃げるタイミングを逃してしまう。
 それぞれ自己紹介を始まってしまうが、分かったことは金髪の男性が美香の彼氏だった。年は22歳らしい。
 腕には黒色の数珠の他に刺青が彫っていた。ヤクザの息子っていうのは本当かもしれない。顔立ちも目つきが鋭く怖い。
 名前は隼人(はやと)というらしい。

「へぇー結羅ちゃんと言うんだ? 可愛い名前だね。カラオケだと何を歌うの?」
「カラオケとか……あまり行かないので。歌うのも得意ではありませんし」

 何故だが美香の彼氏のはずなのに、隼人は結羅だけに質問をしてくる。しかも、隣りの席まで移動してきた。
 実際にカラオケは苦手だ。結羅は、ある事情から友人を作ることが出来なかった。