青龍は水や自然を操る以外に、身体を分解する能力を持っている。共有も出来るために、二手に分かれて茜の護衛の他に伊織の秘書の仕事に就いているのだ。
 匠が話し終わると、伊織は足を組みながら考え込んでいた。どうして、このような行動に出たのだろうか? と。

(ややこしいことをせずに、襲うことも出来たはず。いや……逆に、危険性を回避しながら、目的を果たすために動いている可能性もあるな)

 玄武にとって、1番苦戦させられるとしたら白虎だ。呪詛を除霊が出来る後継者に、素早い攻撃が得意な白虎は天敵だろう。
 ガサッと結羅と茜の個人情報が書かれた書類を取り出すと眺める。

(なるほどな。白石家の両親では無理そうだから、外から攻撃に出たようだな。自分の手を汚さずに相手を苦しませる気だろう)

 白石家と龍崎家が手を組んだことで焦りもあるのだろう。どんな手を使ってくるか分からない。場合によっては、おびき寄せる作戦かもしれない。

「匠。今回の件は、あの姉妹のお陰で知ることが出来た。引き続き、あの姉妹を自由にやらせておけ。そして情報収集と監視を忘れるな」
「分かりました」

 匠がそう言うと、伊織は黙ったまま書類をバサッと置いた。窓から見える景色を見ながら「目障りだ」と呟くのだった。

 2人がそんなことを話し合っているとは知らずに、結羅は帰宅した茜に黒石神社のお守りのことを聞いていた。茜にも、その情報が出回ってしまったようだ。

「こんな気持ち悪いのが世間に出回ったら、大変なことになるよ? どうにか出来ないの?」
『無理だな。我々がどれだけ言ったところで世間は聞き入れないだろう。それぐらいSNSの力は強い。見つけ次第、こちらで除霊するしかないだろう』

 茜の訴えに、虎太郎もどうにも出来ないと答える。それが現実だろう。