それを否定する。簡単なことではないから真剣にやれるのだ。
 いつ裏切られるか分からない龍家の力を借りるつもりはない。そもそも、信用なんて最初からするわけがないだろう。
 匠は、それ少し黙ったが、また口を開いた。

「わざわざ自分から険しい道を選ぶ必要はないだろう。強情な女だな」
「その道が険しいかなんて自分で決めることよ。強情? 上等だわ」

 匠の皮肉をそのまま返した茜。一切負けるつもりはない。
 気が強い茜は、匠みたいなタイプは嫌いだった。冷淡で自分以外どうでもいいと思っている。だから相手の気持ちなんて考えない。

(こういう男はプライドが高いから厄介なのよね。女なら自分のいいなりになると思ってそうで。あ~ムカつく)

 それ青龍だろうと関係ない。ただの嫌な男……それだけだ。
 しかし、その時だった。近くで歩いていた女子高生2人組の話し声が聞こえてきた。

「本当にご利益あるのかなぁ~? 黒石神社のお守り」
「ある、ある。 だって『願いが叶うお守り』だよ? これを持っただけで力が湧いてくるんだから」

 そう言って自慢していた女子高生から真っ黒なオーラがまとわりついているのが見えた茜。

(これは呪詛に操られた人と同じだわ!? 真っ黒で邪悪な感じ)

 明らかに、この女子高生から感じる。茜は慌てて、その女子高生達の後ろを追いかけて声をかけた。

「あ、あの……そのお守りを見せてもらっていいですか!?」
「えっ? 何? これだけど」

 そう言って見せてくれたのは黒色の無地に玄武の絵柄の刺繡が入った、お守りだった。このお守りから強い呪詛を感じる。しかも思ったよりも気味が悪い。