「どうにか、出来ないかしら？　このままだと茜が可哀想よ」
『お腹を満たすことは難しいが、ある程度の霊力を補給が出来たら体調を崩さずに済む。結羅は他の者と比べて霊力が強くて多い。少しでも霊力を分けてやれば、安定するかもしれないな』
「本当！？　それなら私は大丈夫よ。霊力を分けるぐらいは」

　それからだ。結羅は料理と弁当に霊力を入れて茜に食べさせるようになったのは。
　料理に一緒にすることで、常にある程度の霊力が摂取しやすくなる。
　それ以外にも結羅は、白色の数珠をプレゼントしてくれた。その数珠は除霊の効果がある。呪詛みたいに強いのには効果はないが、変なものは寄せ付けない。
茜は不思議と霊力をコントロールしやすくなった。それに結羅の分けてもらった霊力のお陰で日常生活を元気に過ごせるようになった。
　だからこそ、その日常生活をこれからも守りたいのだ。結羅が守ってきたように。


「今は学生だからお金はかかるし、時間だってかかる。でも医者になったら、安定した収入が手に入るわ。そうなったら家を出て行って、お姉ちゃんと虎太郎を入れて２人と１匹で幸せに暮らすの。お姉ちゃんが安全に暮らせるような場所で。そのためにも、今は勉強を頑張って希望の高校に合格しないといけないのよ」

　茜は、きっぱりとそう言い切った。その想いは簡単なものではないが、結羅のためにも叶えないといけない。
　そして、あの日以来、会うことはなかった女医のようになりたいと思った。
　匠は何か思うところがあったのか黙って聞いていたが、徐にボソッと口を開いた。

「それは……主との契約結婚で叶えられるだろう？　それでは満足いかないのか？」

　しかし茜は、ハッと笑う。

「お姉ちゃんとの結婚なんて期限付きじゃない。それに、そういうのは自分で叶えるから価値があるのよ！　金持ちの気まぐれな道楽と一緒にしないで」