なにより驚いたのは、燃え上がるような赤色のオーラだったことだ。こんな赤色のオーラは、今まで一度も見たことがない。
 赤と言えば『嫉妬』や『情熱』の感情が強い。その時の茜は幼かったから分からなかったが、目を奪われるには十分だった。

「おいしゃのおねえちゃん……あかいろ」

 思わず茜がそう言うと、女医はニコッと微笑んだ。そして茜の傍までくると、しゃがんでくれる。

「お嬢ちゃん。お名前は?」
「あ……かね。しらいしあかね」
「あら、とても可愛らしいお名前ね。そう……白石家の。今日はどうして病院に? 気持ち悪くなっちゃった?」
「うん……おなかすいてきもちわるくなったの。それと……」

 優しく話しかけてくれたが、上手く言葉に出来なくてモジモジしてしまう茜。
 オーラが見え過ぎて怖くなったとは言えなかった。言ったとしても姉の結羅や祖母ぐらいしか信じてくれないからだ。
 女医はクスッと笑うと、茜の手を優しく握ってくれた。

「そう……でも大丈夫よ。いつか、その能力はコントロールが出来るようになるわ。その能力は、あなたの役に立つはずよ」
「……ほんとう?」
「ええ……本当よ。そうだ、いいものをあげるわね」

 女医はそう言うと、白衣のポケットから何かを取り出した。そして茜の右手に付けてくれた。
赤色の数珠だった。ちょっと大きく感じたが、すぐにピッタリのサイズに縮み出した。

「わぁ~あかくて、きれい。ありがとう、おいしゃのおねえちゃん」