両親の喧嘩にどうしようかと思っていたら、ガチャッと玄関のドアが開いた。

「ちょっと、外まで聞こえているわよ」

 入ってきたのは妹の白石茜(しらいし あかね)だった。

「茜ちゃん。お帰りなさい」

 母親は嬉しそうに言うが、茜は無視してチラッと結羅を見る。そうしたら、はぁっと深いため息を吐いた。

「そんなことより、今日の小テストの結果が出たのだけど」

 茜は、そう言いながらテスト用紙を両親に見せてきた。テストの結果は百点満点。
 それを見た、両親はさっきまでの怒りを忘れて茜を囲って大喜び。

「まぁ、満点。さすが茜ちゃん。お母さんも鼻高々だわ」
「さすが俺の娘だ。この調子なら有名私立高校に受かるのは間違いないな。医者の夢だって叶うだろう」
「当り前じゃない。この子は特別優秀なんだから」

 両親は茜を溺愛している。学年でもトップクラスで成績優秀。それに目が大きくてパッチリした二重。口元が小さく、透き通るような白い肌。
 色素の薄いふわふわ茶髪のボブヘア。近所や学校でも評判の美少女。
 それに比べて、結羅は何に対しても平均で平凡。成績は普通。特別可愛いわけでもなく、地味な方だろう。
 そのせいか周りから比べられることが多く。特に両親は妹だけを可愛がり、差別されて育ってきた。
 今だって満点なテストを見せた茜だけを褒めて、結羅には見向きもしない。それが、この家では日常的だ。
 ちやほやされる茜を見て、結羅は複雑な気持ちになる。そうしたら、茜が両親に、

「ねぇ、そんなことをしていて大丈夫なの? 仕事はいいの?」

 そう言って、スマホの画面を見せる。とっくに出勤時間は過ぎていた。

「あら、嫌だ。もうこんな時間!? 急がないと。お姉ちゃん。ちゃんと茜ちゃんに、ご飯を作って食べさせてちょうだいよ」