冷静に言い返す匠に茜の堪忍袋の緒が切れる。冗談じゃない。

「降ろして。私、1人で学校に行くから」

 こんな男と一緒に行けるわけがない。ロックを解除してドアを開けようとした。

「おい、勝手に開けようとするな!? 運転中だぞ!」
「だったら、さっさと車を止めなさいよ。ぐちゃぐちゃと言うなら、ここから飛び降りるから」
「はっ? 勝手なことを言うなよ。そんなことをしたら俺が主に怒られる」
「だったら嫌味を言わずに黙って走りなさいよ!? じゃないと、本当に飛び降りるわよ?」
「ワガママを言うな!?」

 車の中でギャーギャーと言い合いになる茜と匠。学校に着くまで口喧嘩が続いた。
 茜にとったら青龍だろうが関係ない。ただ姉を傷つけるかもしれない人物が許せなかった。
 そんな人物がこれからボディーガードも兼ねているなんて。どう考えても、守ってくれる気があるとは思えなかった。先が思いやられるだろう。
 
 そんなことを知らない結羅は1人で電車に乗って大学に向かっていた。
 大学は、そこまで偏差値の高いところではないが、教育学部など多くの学部があって充実している。
 着くと、そのまま学生センターの方に向かった。結婚したので苗字と住所変更がする必要があったからだ。
 あまり結婚したことを知られたくなかったので、学部の教授には『白石』のままで呼んでほしいと伝えないと。
 そう思いながら手続きを無事に済ませて、学生センターを出る。他にも手続きをしないといけないところはある。