「あなた、人間ではないでしょ?」

 その言葉に匠の肩はビクッと揺れる。しかし、すぐに冷静さを取り戻していた。

「……どうして分かった?」

 やはり正解だったみたいだ。青村匠は、恐らく青龍だろう。

「私は人の感情がオーラとして見えるの。あなたのオーラは真っ青。人間の感情が一色なることはないのよ。絶対に」
「……ほう」
「そう考えると、龍崎家が祀っている青龍と考えた方が納得するでしょう? どうして、人間の姿になっているの?」

 茜は冷静に分析して見せた。いろんな感情が混ざりやすい人の感情が一色だけというのは考えにくい。姉である結羅すら白色の他に灰色だったりするのに。
 それが出来るのはこの世の者ではない霊か、オーラすらコントロールが出来る神獣ぐらいだろう。
 青龍は鮮やかな青色のうろこを持った巨大な龍だ。だから強い霊力が真っ青な色となって現れるのだろう。この男みたいに。

「なるほど。流石、白虎が祀っている白石家の血筋だな。だが、しかし俺が人の姿になっているのは、あくまでも主を守るためだ。そして変な真似をしてみろ、容赦はしない」

 そう言うと、バックミラーから威嚇するような鋭い目を向けてきた。目の色は青色に変わる。オーラは見づらいが、怒りを向けられているのが分かる。
 恐怖で押さえつけたいのだろうか?
 しかし負けず嫌いな茜は、ふんぞり返るぐらいに腕を組むと、ハッと笑う。

「こっちこそ。お姉ちゃんを傷つけたら、マジで許さないから」

 それぐらいのことで怯む茜ではない。バチバチと火花を散らせる。

「……許さないって、どうするつもりだ? オーラが見えたとしても、霊力でどうにか出来るほど力があるようには見えないが? 非力なら大人しくいていた方がいいと思うけどな」