「ご、ごめんなさい。でも……今日はバイトの日で」
「バイトだと!? また俺の実家で除霊ごっこして遊んでいるのか? まったく、くだらない。母と妹もだ。幽霊とか存在しないものをコイツに押しつけてきて。だから、こんな融通が利かないバカな子に育ったんだ」

 父親は霊感を持っておらず、霊とか非現実的なことは信じていない。自分の実家が白石神社でも、逆に疎ましく思っていた。
 そのため結羅が白石神社のバイトをしたいと言った時も酷く反対した。くだらないことをする暇があったら勉強と家事をしろと。
 母親の方を見ると、眉間にシワを寄せて険しい表情で結羅を見てくる。

「本当に……この子ったら茜ちゃんとは大違いね。最近事件が多くて物騒だから、迎えに行ってほしかったのに。茜ちゃんの面倒も、ちゃんと見られないなんて。それでもお姉ちゃんなのかしら?」

 その眼差しは冷たく、娘を見るような雰囲気ではなかった。頬を赤く腫れた結羅は、グッとスカートの裾を握り締める。

「……ごめんなさい」
「あなたが遅いせいで、仕事の時間を遅らせてもらったのよ? まったく、これで師長に嫌味を言われたら、どうしてくれるのよ。お父さんだって、残業で着替えを取りに戻っただけだと言うけど……どうせ愛人のところでしょ?」
「はっ? 何だと!?」

 結羅が謝るが、今度は両親同士が喧嘩を始めてしまった。我が家はいつもこうだ。
 母親は夜勤勤務の看護師。父親は中小企業の会社員。そして中学2年生の妹・茜(あかね)との4人家族。ごく一般家庭なのだが、家庭環境はかなり複雑だった。
 母親は仕事で家を空けることが多く、帰っても寝てばかり。そして父親は残業だと言うが、真相は分からない。ただ帰宅するのは少ないし、帰宅しても怒鳴り散らす。
 そして、1番の問題点は……。