「はぁ? そいつ……そんな失礼なことを言ってきたの!?」
「茜……女の子なんだから、そいつとか言わないの。親切に忠告をしてくれたのだから。それに助けてくれたのよ?」
「いや……でも結局、失礼には変わらないじゃん。そう思うなら……改善しろって、話だよね」

 茜はご飯を食べながら、キッパリと否定してくる。言い分は分かるが、それはなかなか難しいのかもしれない。
 伊織は人を信用していないと、前に言っていたが。

「色々と事情があるみたい。伊織さんは人を信頼するのが苦手みたいだし。だから使用人の方にも冷たくしちゃうみたいで」
「そんなの、その伊織っていう男が勝手にやったことじゃない。こっちまで火の粉がかかるなんて最悪。まるでウチみたいだし」

 茜にとったら、それは迷惑以外でしかないと言われてしまう。それに我が家もみたいだと言われて複雑な気持ちになる結羅。

「まぁまぁ。それよりご飯のおかわりいる? すまし汁も、まだあるわよ」
「うん、欲しい。お姉ちゃんのご飯なら5杯は食べられる」

 喜んでお茶碗を出してきた。結羅はクスクスと笑いながら受け取ると、虎太郎は呆れたようにため息を吐いてきた。

『お前は、少しは遠慮しろ』
「遠慮しても私のお腹は満たないのよ」

 茜と虎太郎のやりとりを聞きながら、おひつに入っているご飯をお茶碗に盛る。
 冷え切った我が家にとって茜と虎太郎はムードメーカ―みたいに明るくしてくれる。この家も自分達が来たことで何か変わるのだろうか? 変わらない恐れもあるが。
 これからの不安を抱えながら、その日は過ごすのだった。