まるで一線を引かれているようだ。

『随分と冷たい奴だな。相変わらず』

 背中に乗って黙って聞いていた虎太郎がボソッとそう言っていたが。

 その後。結羅は気を取り直して台所に戻って料理を作り始めた。板前は黙って、材料と器具とか提供してくれたので助かった。
 今日は、ぶりの照り焼き。筑前煮、ごぼうとひじきのサラダ。野菜とわかめのすまし汁を作って部屋に持っていく。運ぶのは使用人の人が手伝ってくれた。
 手際よく作るので板前は驚いていたが感心してくれた。今後は使いやすくなったと思う。
 結羅の部屋の長机に出来上がった料理を置いていると、茜がお風呂に入ってきたようで戻ってきた。だが、かなり怒っている様子だ。

「ちょっと、お姉ちゃん。聞いてよ~さっき、お風呂に入ろうと思って場所を聞いたんだけど。そうしたら凄く冷たい態度で返されたんだよ」

 どうやらお風呂に行く途中でトラブルがあったようだ。匠が言った通りに距離をとった言い方をされたのだろう。

「そうだったの。でも答えてくれたんでしょ?」
「まぁ……凄く感じ悪かったけど」

 茜には不満だったようだ。文句を言いながら髪をゴシゴシとバスタオルで拭いていた。これが、使用人達に受け入れ方なのだろう。
 それでも茜に言葉だけで攻撃しないだけマシかもしれないが。しかし、生活するのは支障が出てきそうで心配ではあった。

『茜~さっさと髪を乾かせ。風邪ひくぞ』
「ム~分かっているわよ」

 虎太郎に注意をされて、茜は不満そうになりながらも自分の部屋に入っていく。
 茜がドライヤーで髪を乾かした後に、夕食にした。その時に匠に言われたことを茜に話した。