それ以外にも長机と座布団が用意されていた。

 茜は隣の自分の部屋を開けながら、
「お部屋は、まぁまぁいいわね。姉ちゃん、寝る時は一緒に寝ようね」
 と、言ってくる。

「はいはい」

 結羅は返事をしながら、中を見渡す。念のために安全の確認をするが、怪しいものやお札みたいなものはないようだ。
 すると、女性の使用人が「失礼します」と言って入ってきた。お茶を持ってくれたようだ。
 長机に置くと去って行くのが、ジロジロと、まるで下見でも来たかのように見られた。まだ妻として信用されていないのだろうか?
 そうしたら茜は不満そうに口を出してきた。

「ねぇ、今の見た? 明らかに私達に警戒しているよね。それどころか冷ややかな態度。オーラまで水色と灰色。茶色まで入っているし、どう考えても歓迎されてないじゃん」

 水色は(冷ややか、冷淡)。灰色は(モヤモヤ、不満)。茶色は(疑惑、苛立ち)。
 どれも歓迎されていると言いづらいオーラばかりと主張する茜。

『確かに歓迎されていないようだな。それに気になったのは主人である伊織って奴にも冷たく感じた。何かあるかもしれないな』
「何かって……何を?」

 結羅は虎太郎の言葉に驚いてしまった。伊織は大きなお屋敷の主人だ。実際に龍崎グループの社長で権力も高い。
 そんな人が、何があったというのだろうか?
 結羅は不安に思ったが、これからは妻として屋敷を支えていかないとならない。契約結婚だとしても一応嫁いだ以上は他人事ではないだろう。
 そう思いながらも、とりあえず生活になれないと。結羅は1人で台所に向かった。