その言葉に結羅の心はえぐられる気持ちだった。そこまでして自分を家族として除外したいのか。
 結羅の目尻に涙が溢れてくる。すると、伊織がハハッと笑う。

「随分と嫌われたものだな? これが家族というのなら滑稽だ。言ったはずだが? 妹も含まれているから渡すことは出来ない」
「何だと!? ウチまで壊しておいて、警察を呼ぶぞ」
「……呼べばいい。そうなると龍崎グループを敵に回すことになるが?」
「龍崎……グループだと!?」

 伊織の発言の驚く父親。その時にハッとする結羅。
 龍崎グループとは、日本だけではなく海外にも力を入れている大企業だ。農業から、飲食店、不動産まで多く経営を手掛けている。しかも、どれも成功させている。
 もとは青石神社だけだったのだが、副業として経営を始めたら大成功したとか。今では神社よりも力が入っていると言われている。

「俺は、そこの社長だ。警察とも通じているから、いくらでも無実に出来る。大人しく、2人を引き渡せ。さもないと龍崎グループの権力を使って、この家ぐらい簡単に潰してみせるが?」
「そ、それは……」

 伊織の権力に父親は何も言えなくなってしまう。それもそうだろう。
 龍崎グループを敵に回すとなると、一般家庭の両親は勝てるはずがない。警察も動かない以上は騒ぎ立てるのは危険だ。
 簡単に我が家どころか、表舞台に歩けなくなる可能性がある。

「2人は我々が責任持って預かる。一応結婚した以上はな。もし、2人に何かしてみろ? 俺が権力で徹底的にお前らを消すつもりだ」

 眉間にシワを寄せて警告をすると、結羅と茜を連れて家から出ていく。

「あ、茜ちゃん……」