そして、ふらふらで立ち上がった結羅を片手で首を締めるように掴んできた。グッと締め付けてくる力は強い。

「うぐっ……」
「お姉ちゃん!? やめて、お父さん。お姉ちゃんが死んじゃう」

 茜は必死に止めようとする。それでも父親の怒りは止まらない様子だった。母親は、止めるところか茜に行かせないようにする。

「茜……向こうに行っていなさい。こんな酷い姉の味方をする必要はない。お父さんに任せなさい」
「そうよ……茜ちゃん。お父さんに全部任せておけばいいの。私達は3人で仲良く過ごせば、それだけで十分よ」

 そう言った両親の目は完全に正気を失っていた。殺気と狂気に満ちた表情は、それ以上に恐怖を与える。
 このままだと本当に殺されるかもしれない。
 今の両親にとって結羅は家族の輪を壊す異物しかないのだろう。邪魔するなら排除する気だ。
 それだけでは済まない。茜も危険が及ぶ。
 茜は恐怖で涙目になりながらガタガタと震えていた。結羅は必死に抵抗しながら、チラッと虎太郎を見る。
 今にも飛びかかりそうな勢いで毛を逆立てていた。合図を送れば、容赦なく大きくなって襲うだろう。

(このまま殺されてしまう……虎太郎に気を引いてもらって。その間に茜を連れて家を飛び出そう)

 結羅は、朦朧とする意識を耐えながら合図を送ろうとした。
 その時だった。ドンッと玄関の方からドアが壊される音がした。

「えっ?」
「何だ? 何が起きたんだ!?」