「茜……喧嘩しに行くわけではないのよ?」

 結羅は不安になりながら止めるが茜本人は「似たようなものじゃん」と言ってきた。
 しかし問題は茜だけではなかった。両親の承諾も必要だ。
 法律が変わり、18歳で成人として認められる。そのため親の許可は必要ないが、結羅の場合は未成年である茜を連れていかないといけない。
 妹だけを溺愛する両親が、それを聞いたら反対する可能性がある。考えただけでも気が重くなってしまう。
 結羅は、ため息を吐きながら引っ越しに必要な荷造りをする。

 次の日。父親は深夜に帰ってきたが母親が帰宅する時間に、そのことを打ち明けた。
 そうしたら予想通りに両親は激怒をしてきた。結羅の結婚話ではなく、茜を連れて行くことに対しての反対だったが。
 言った結羅の頬を平手打ちする。そして襟を掴み暴言を吐く父親。

「冗談じゃない!? お前が出ていくだけならいい。勝手にしろ。だが、茜を連れて行くことは許さん」
「そうよ……なんて恩知らずなの。私達から茜ちゃんを奪うなんて」

 母親は泣きながらハンカチで涙を拭いている。
 これでは大事な娘を連れていく誘拐犯みたいな態度だ。

「お、お父さん……落ち着いて。これは……家族を守るために必要なことなの。茜の生活は保障されるし」

 襟を掴まれたせいで苦しかったが、必死に訴えかける。

「何が家族を守るためだ。そんな怪しいところに嫁ぐのに、信用が出来るか!? そんなに行きたかったら1人で行け」
「ダメ……私は茜を連れていく。あなた達に茜を任せておけない」
「ふざけるな!」

 そう言うと怒り狂った父親は結羅を突き飛ばした。思いっきり壁にぶつかった。