結羅の心臓はドキドキと高鳴っていると、伊織はため息を吐く。

「言っておくが、普通の結婚ではない。契約結婚だ! あくまでも協力体制の時だけのもので、片付いたら離婚してやる。中途半端な約束事よりは確かな繋がりが出来る。もちろんタダとは言わない。その間の命と生活の保障はしてやろう。なんなら契約金を出してもいい。悪くない条件だと思うが?」

 彼の言い分は、あくまでも期限付きの契約結婚だった。
 人間不信とも取れる態度で、そのための強い繋がりを求めてきた。それには虎太郎も啞然とする。そして『ありえない』と、激怒してくる。

『それでは、いいように使い回しされているのと同じだ!?』
「……それの何が悪い? 別にずっと、とは言っていないだろう。好きでもない者同士が結婚するのだから丁度いいだろう。年齢も結婚が出来るから問題ない。保障だってあるのに、何が不満なんだ?」

 伊織にとったら、当然のことなのだろう。
 確かに恋愛で結婚するわけではない。保証もしっかりしているし、下手な契約よりも強力だ。
 結羅は考え込む。実際のところ、自分1人では限界があった。
 今回の事件も、伊織が来なかったら命が危なかっただろう。虎太郎が居るとしても、茜と同時に危険になった場合は選択しないとならない。
 結羅は、そういう時は茜を選んでほしいと思っているが、虎太郎は後継者である結羅を選ぶ可能性はある。辛い選択肢をさせることになってしまう。
 それだけは避けないと。

「……こちらも条件を出すことは可能ですか?」

 結羅は条件の追加を要求する。出したのは彼らが優位に立つものばかりだ。
 煩わしく思ったとしても、損があるわけではない。向こうは目的が果たせればいいのだから。

「……何だ? 言ってみろ」