「は……はい。大丈夫です」

 本当は精神的に大丈夫ではない。あと少しで殺されかけたのだ。
 今になって恐怖で身体がガタガタと震えてきた。それでも両親の怒りは収まらないようで暴言が飛ぶ。
 結羅は泣きたいのを必死に我慢するのが精一杯だった。
 後日。「また連絡します」と言われて自宅に帰された。帰った頃には、日付が変わろうとしていた。

 その日は大学を休んで、次の日。家庭は元に戻っていた。
 しかし数日も経たずに、意外な来訪者が自宅に訪れる。それは両親が仕事で居ない時で、茜も塾で帰りが遅かった。
 インターフォンが鳴ったので、出ると長髪のスーツ姿の男性だった。
 どうして彼が、自宅を知っているのだろう。結羅が戸惑っていると、彼はこう告げる。

「白虎の後継者として、頼みにきた。今回の事件に深く関わる大事なことだ」

 どういう意味だろうか?
 怖さがあったが、今回の事件のことが関わると言われると気になってしまう。
 結羅は不安になりながらも家の中に上がることにする。
 傍に居た虎太郎は警戒していたが。
 リビングに案内すると、ソファーに座ってもらう。急いでお茶の用意をしてテーブルに置いた。その間がまったく話さない。
 長髪のスーツ姿の男性は、出されたお茶は口につけずに話を進めてくる。

「単刀直入に言う。俺の名は龍崎伊織(りゅうざき いおり)。年齢は28。見れば分かると思うが、青龍を祀っている青石神社の現当主だ」

 やはり青龍を祀っている青石神社の後継者だった、既に当主となっていることには驚いたが。年齢も当主にしては若い。