結羅は啞然として立ち上がることも出来なかった。

(この人は……誰?)

 初めて会う人なのに、胸がざわつく。しかし1つ分かったことが。
 彼は、間違いなく青龍の後継者だと。
 青く強力な霊力が彼を包んでいる。まるで背後に青龍が見えるぐらいで、ゾクッと身体が身震いするほど。そして美しい男性だった。
 背も180センチ以上あるのだろうか。スラッとしてスタイルがいい。
 キリッとした眉とまつ毛の長い二重目。鼻筋がスッと高くて、全体的に整った顔立ち。その上、胸元まである長髪がよく似合っている。
 芸能人でも、こんな綺麗な男性は、なかなか居ないだろう。まるで神秘的。
 結羅はボーッと彼ばかり見ていると、茜の声が聞こえてくる。

「お姉ちゃん!?」

 ハッと我に返る結羅。声をする方に振り向くと、茜が心配して店内から出てくる。
 そして見つけると、結羅のところに駆け寄ってきて抱き締めてくる。泣きながら。

「大丈夫よ……茜」
「お姉ちゃん。無事で良かった~」

 茜を抱き締め返すと、よしよしと背中を叩いてあげる結羅。
 とりあえず助かったらしい。
 だが、それで終わりではなかった。それを見ていた長髪のスーツ姿の男性はボソッと呟いた。

「なるほど……白虎の後継者か?」
「えっ!?」

 結羅はその言葉に驚いて、咄嗟に茜を抱き締めた状態で守ろうとする。
 まだ、この男性が安全とか限らない。それに自分が白虎の後継者だと気づかれてしまった。
 虎太郎も警戒するように睨みつける。しかし、長髪のスーツ姿の男性は冷たい目で結羅と茜を見下ろしてきた。フッと笑う。