しかし、そう簡単には行かなかった。外で悲鳴を聞いた通りすがりの人が道を塞いでいた。他にも逃げている人達が邪魔になる。
 結羅は何とか外に出る。だが逃げ回る人の肩に当たってしまい、そのまま横に転倒してしまう。そのせいでお札を取り出すタイミングを逃してしまった。
 周りが騒ぐ中、不審者が結羅を追いかけて店内から出てきてしまった。
 そして結羅を見つけると、鼻息を荒くして近づいてくる。手にはナイフが。
 このままでは、まずい。

『結羅!?』

 虎太郎が急いで店内から飛んでくる。
 結羅は何とか体勢を戻そうとするが、間に合いそうにない。不審者は興奮気味にナイフを結羅に向かって振り下ろそうとした。

(もう……ダメ!?)

 結羅は恐怖で目をつぶる。しかしドカッと何がぶつかる音がした。
 痛みは感じない。どうしたのだろうか?
 恐る恐る目を薄っすらと開けると、不審者は1人のスーツ姿の男性によって殴られた後だった。
 ドサッと不審者は倒れていた。そうしたらスーツ姿の男性は、ネクタイを直しながらチラッと結羅の方を見てくる。青が混じった黒色の長い髪が美しくなびく。

(えっ……?)

 その瞬間、結羅の心臓はドクッと大きく高鳴った。まるで時が止まったような感覚が起きた。
 しかし不審者は、痛がりながら起き上がろうとしてきた。危ない。
 それでもスーツ姿の男性は顔色を1つ変えない。それどころか、
「匠。やれ」と、命令。
 そうしたら、もう1人の黒色のスーツ姿を着た小柄の男性が、颯爽と駆け寄ると不審者を蹴り飛ばしてしまった。不審者はそのまま気絶させる。