『ああ、2人が合わせることが鍵となる。結羅は人に霊力を分け与えられるぐらいに多いからな。もしかしたら朱雀の後継者は、それに気づいて、茜に赤色の数珠を渡したのかもしれんな』

 伊織の言葉に、虎太郎はそう返事をする。結羅と茜はそれを聞いて驚いた。
 2人の能力を合わせるのもだが、既に茜は朱雀の後継者に会っていたことになる。
 つまりは幼い頃に会った女医は朱雀の後継者であり、当主だった可能性が高いということになる。

「あの……女医さんが!?」

 茜は驚いて両手で口を隠した。心臓がドキドキと高鳴っている。
 まさか憧れて医師になりたいと思ったきっかけを作ってくれた女性が、朱雀の後継者だったとは。あの言葉の意味はそういうことだったのだろうか?

「しかし、どうして朱雀の後継者が茜に数珠を渡したんだ? 知り合いでもなかったのだろう?」

 それに対して匠が意見をぶつける。

『それは分からないが、必要だと判断したのかもしれん。今回はそれで助かったが』

 虎太郎も分からないと言ったが玄武の当主との戦いでは、それが救いとなったのは確かだ。

『あと、もう1つ。気になることがある。鵺のことだ。鵺はつかみどころのない性格で、人を怖がらせたり、からかったりするひねくれもの。だが、人間をあそこまで貶めるとは思えない。何か裏があるような気がする』
「例えば?」
『誰かが……裏で操っているとかな』
「えっ!?」

 虎太郎の言葉に全員がざわつく。もしそうなら、何を企んでいるのか?
 ここまで騒ぎにした理由が分からない。

「そんな……」