伊織の言葉に結羅は驚いた。まさか彼から、そんなことを言ってくれるとは。
　いつかそう思ってくれたらいいなとは思っていたが、人間不信な彼には、まだまだ先だと思っていたからだ。
　そうしたら結羅の目をジッと見つめてくる。

「私でいいのですか？」
「当然だ。俺の妻は結羅……君だけだ。だから、契約結婚ではなく、もう一度やり直そう。結婚しよう」

　伊織は正式にプロポーズをしてくれる。契約結婚ではなく、本当の夫婦になろうと言ってくれた。
　やっと２人は両想いになることが出来た。
　結羅は頬を赤く染めながら、その言葉に心の底から嬉しいと思った。
　もうとっくに結羅の心には伊織の存在が大きくなっていた。どこか放っておけなくて、寂しい表情を見せてくる。
　それでも自分を必死に守ろうとしてくれた。不器用で、優しいところもあって。そんな彼に目が離せなかった。

「……はい。お受けします。あなたの幸せは私が守ります」

　涙を流しながらも精一杯の気持ちを伝える。
　そうしたら伊織は頬を少し染めながらも、ニコッと微笑んでくれた。こんな彼を見たのは初めてだった。
　お互いに抱き締め合いながら、唇にキスをする。しかし、それを見ていた虎太郎がため息を吐いてきた。

『おいおい。ワシの存在を忘れるではないぞ』と……。

　その頃、茜と匠は病室で一緒に過ごしていた。眠ってしまった茜を見つめながら、椅子に座っている匠。
　ソッと茜の手を握る。その光景は、静かで穏やかなひとときだった。