彼は不気味にフフッと笑っていた。

 その頃、何とか自宅の戻った伊織達。
 茜を奪われた結羅は一言も話さずに、ずっと部屋で塞ぎ込んだままだった。伊織は、どう声をかけた方がいいのか分からずに困惑していた。
 その様子を見ていた虎太郎は伊織に話しかける。

『今後、結羅に何かしらして接近してくるはずだ。黄龍を呼ぶにはワシの後継者の心臓が必要だ。あくまでも茜は人質として利用してくるだろう』
「……罠を仕掛けてくるってことか?」
『おそらくな。青龍の後継者でもあるお主も一緒に手に入れたいところだろうが、何を考えているのか分からない。気をつけろ』
「ふん。言われなくても、そのつもりだ」

 伊織はそう言いながら、チラッと結羅の方を見る。全く身動きしない彼女を見て、歯痒い思いをする。
 そして部屋から出ると、外で待機をしていた匠に命令をする。

「分かっているな? 白石茜を必ず探せ」
「……はい。承知しました」

 そう言った匠だったが、既に分身を使って捜索をしていた。目に前で奪われたことは、匠自身にとって怒り心頭だった。
 しかし思った以上に、居場所を見つけるのは混乱だった。土の中で移動されると見つけにくい。それに相手は玄武と鵺。
 人間と違って、能力を使われて姿を消すことが出来るからだ。

(絶対に見つけてやる。アイツらをぶっ潰す。待っていろ……茜)

 日が暮れて空は真っ暗になると、結羅は眠れない夜を過ごしていた。
 隣りを見ても、いつも一緒に居る茜が居ない。虎太郎の姿も見えなかった。