パッと慌てて伊織は結羅を庇ってくれたが、野々華はフフッと笑っている。
 しかも野々華の方には鵺の姿が。だから、ドアが壊せたのだろう。

「さあ、私と一緒に行きましょう? 結羅」

 野々華は、笑顔で手を伸ばしてくる。このままだと全員がピンチになってしまう。
 本当に、やるしかないのだろう。

(こうなったら仕方がないじゃない。やるって決めたのだから、しっかりするのよ……私)

 結羅は必死に自分に言い聞かす。皆を助けるためには、迷ってはいられない。
 目をつぶって、意識を集中させる。ギュッと握った拳は小刻みに震えていた。
 そしてチラッと目を開けて虎太郎の方を見ると、コソッと話しかける結羅。

「……虎太郎、お願いがあるの。大きくなって、一瞬でもいいから野々華ちゃんの動きを止めて」
『大丈夫なのか?』
「……うん」

 虎太郎は主である結羅の意思を確認すると、言われた通りに大きくなる。そして威嚇するように唸りだした。
 強い霊力を出しながら威嚇する虎太郎に、さすがに野々華達は動揺したようだ。

「な、何よ……この化け物は!?」

 その隙を見て、結羅は手提げバッグから一枚のお札を取り出すと、立ち上がった。

「……結羅?」

 驚いた伊織を気にせずに結羅は、お札を出して除霊を始める。お札が金色に輝きだす。

「臨兵闘者皆陳裂在前。悪しき呪詛を封印せよ」

 お札を野々華の胸元に貼り付ける。結羅は、野々華を除霊する決意を下した。