青龍である匠と違って、３人は人間だ。茜は、息を切らしながら怒った。
　伊織も言葉には出さないが若干辛そうではあった。
　すると、下の方からも人の気配が。もしかしたら挟みうちにする気だろうか？
　焦る結羅と茜だったが伊織は、すぐ状況を判断する。現在６４～６３階の間。

「この下の階のところまで急げ。何処かの部屋に一旦隠れるぞ！」

　そう言うと、そのまま６３階まで行くと、宿泊部屋まで駆け出す。
　丁度、清掃スタッフの人が、掃除をするためにドアを開けるところだった。

「すみません。緊急事態のために部屋を貸して下さい」

　伊織は強引に清掃スタッフの人からマスターキーを奪い取ると、ドアを開けて強引に中に入った。ガチャッとドアを閉めると、鍵をかける。
　清掃スタッフの人は驚いていたが、それを気遣っている暇はない。
　茜は匠が。結羅は伊織に抱き締められながら息を潜める。しばらくすると、外の方が騒がしい。

（どうしたのかしら？）

　そう思った瞬間だった。ドンッ、ドンッとドアが思いっきり叩かれる。
　ビクッと肩が震える結羅を伊織はギュッと抱き締めてくれたが、無理やりドアをこじ開けようとしてきた。
　そうしたら外からの掃除スタッフの人が何か言っている。

「ちょっと、何をやっているんですか！？　やめて下さい」
「えっ？　うわああ～」

　ガッシャンと凄い音が聞こえてきた。悲鳴まで聞こえる。
　一体、外で何があったのだろうか？
　その音に茜が怖がって、ガタガタと身体を震わしてしまう。匠は「大丈夫だ」と言って励ましていたが、このままの状態で、ずっと居るわけにはいかない。
　どうにかしないと。しかし、その時だった。

「ねぇ、結羅。そこに居るのでしょ？　どうして祝ってくれないの？　私達……親友なのに。また……私が危ない目にあっても平気なの？」