目は正気ではない。ギロッと睨んでくる目には生気が宿っていなかった。

「ま、まさか全員に呪詛をかけたのか！？」

　全員でも３０人以上は居るのに。これだけの数をやるには、かなりの霊力が使うはずだ。彼はどれだけの霊力を持っているのだろうか？

「そうだ。この霧はお香を応用したもの。何も付けなくても呪詛にかけることが出来る。そして、思うがまま操ることも出来る。ゾンビのようにな」

　柳木の言葉通りに招待客は、ぞろぞろと結羅と伊織のところに歩き出した。野々華や、その両親までもが。
　伊織は結羅を後ろに隠してくれたが、ピンチに。
　その時だった。ドンッと扉が勢いよく壊された。そして茜が叫ぶ。

「お姉ちゃん、伊織さん。こっちよ！」
「あ、茜！？」
「早く！」

　茜は急いでと、こちらに来るように指示を出してくる。そうしたら伊織は、結羅の手を握ると、慌てて扉に方に向かっていく。

「で、でも……野々華ちゃんが」
「そんなことを言っている暇はない。逃げるぞ！？」

　伊織は、そのまま結羅を連れて、会場の外に飛び出した。茜も匠に連れられ、一緒に行動する。
　エレベーターで逃げている余裕はない。後ろからゾンビのように招待客達が追いかけてきた。仕方がなく階段から逃げることに。
　しかし７３階から１階までとなると、かなり時間と体力を使う。途中から息切れをして、降りるのもギリギリの状況になってくる。

「ま、まだ？　……もう限界」
「おい、まだまだ先だぞ！？」
「四神のあんたと体力が違うのよ……こっちは」