「……何だ? 夫である俺が一緒に来たらダメなのか?」
「えっ……? そんなことはないですが」
「……それよりも、何故か勝手なことをする? 罠かもしれないのに」

 どうして知ったことよりも、勝手なことをした結羅に厳しい言葉をかける伊織。
 危ない場所に来たことに、いい顔はしていない様子だ。

「……すみません。でも、野々華ちゃんは私の親友です。危ないことをするつもりなら、止めたいと思って」

 その言葉に全てが詰まっていた。

「……どうしてだ? 人は勝手に裏切る。あの女も、君を貶めるだけかもしれないのに」

 そんなことは分かっている。

「……それでも何とかしてあげたいと思っています。あの時は、自分のことでいっぱいで彼女の話をちゃんと聞いてあげられなかった。どんな結末になっても、今度は、親友として聞いてあげたい」
「……裏切られたとしてもか?」
「私は野々華ちゃんのように人を傷つけるのが怖くて、今まで友人を作ることが出来ませんでした。それは私の弱さ。でも、弱さをちゃんと認めて、それでも大切にしてきたものは最後まで守りたい。彼女やあなたにも、そんな私を知ってほしいと思っています」

 結羅は真っ直ぐと伊織の顔を見ながら伝えた。
 自分の臆病な姿を認めたことは勇気がいる。それでも、前に進んでいくためには受け入れないといけない。
 その上で、今出来ることをしたい。

「俺は……信用なんて……出来ない」
「今は、それでも構いません。ゆっくりでいいのです。私のことを知ってからでも」

 結羅は、そう言いと伊織に向かってニコッと微笑んだ。