野々華の結婚式当日。
 結羅は結婚式が行われる高級ホテルに出席する。もちろん背中には虎太郎が一緒だったが。
 罠だと十分に分かってはいる。それでも野々華の本心を聞いていない以上は放っておけなかった。

(私には……やることがある)

 それが悲しい結末になろうとしても、結羅にはやるしかないと思った。
 受付を済ませて、式場の中に入って行く。ここのホテルは74階まである。
 最上階がレストラン。73階が結婚式となっている。素敵な景色を眺めながら、挙式を挙げられるという特別感が人気だ。
 入って行く結羅を遠くで見守っていたのは茜と匠だった。姉のことが心配して、こっそりと付けてきた。

「なんで俺まで?」
「何かあった時の用心棒のためよ。それに、あんたと関わった方が、あんたの主に連絡がすぐに行くでしょ?」
「……まあ、確かに」

 文句を言う匠と違って、茜は冷静に言い放つ。彼らの行動を分析した上で、伊織とすぐ連絡が出来る方法を選んだ。
 しかし、その時だった。ある人物が受付に現れるのが見えた。その人物に驚く茜。

「なんで……アイツが? ここに?」

 まさか、呼ぶ前に来るとは思っても見なかった。

 その頃。結羅はチャンペルに入ると、後ろの席に座る。そうしたら、しばらくして隣りに座ってきたのは伊織だった。
 結羅は伊織には何も言っていなかったので、何故居るのかと分からず驚いた。

「伊織さん。どうして、ここに!?」