「……そんな」
『これ以上、罪を重ねる前に処理したのだろうな。龍崎家に危害を加えただけではなく、結羅達にも危険が高くなっていた。本来なら警察沙汰だ。そうなる前に病のせいで済ませたかったのだろう。それが彼なりの優しさだったと思うぞ』
虎太郎の言葉に胸が傷んだ。結羅と茜はずっと黙って聞いていることしか出来なかった。
改めて考えさせられる。これからのこと、そして伊織の本心を。
その頃、匠も伊織もそれぞれ考え込んでいた。伊織は離れの部屋で、暗い部屋で悲しい表情をしていた。匠もまた外で雨の夜空を眺めていた。
その姿は美しくもあり、近寄りがたいミステリアスな雰囲気があった。
翌朝。茜と結羅は朝食を食べて、それぞれの学校に行く準備をする。
茜はいつもの通りに制服に着替えて、匠が運転する車の前まで顔を合わせた。
「「…………」」
お互いに黙り込む。昨晩のことがあったのだ、恐れられても仕方がないだろう。
人間の女性には残忍な光景だった。そのため避けられることは覚悟していた匠。
「どうする?」
断わられると思いながらも匠がそう聞いた。しかし茜は黙って、そのまま車の中に乗り込んできた。
目を大きく見開いて、驚く匠。一緒に行く気になったということか?
急いで運転席に移動する。茜は足を組みながら大人しく待っていた。
「……てっきり乗って来ないと思っていたが、いいのか?」
そうしたら茜はジッと匠の方を見る。
「……私は実際に見たことしか信じない。目をつぶっていたから、何も見ていないわ。もし見たとしても、自分で感じたことを信じるだけ」
『これ以上、罪を重ねる前に処理したのだろうな。龍崎家に危害を加えただけではなく、結羅達にも危険が高くなっていた。本来なら警察沙汰だ。そうなる前に病のせいで済ませたかったのだろう。それが彼なりの優しさだったと思うぞ』
虎太郎の言葉に胸が傷んだ。結羅と茜はずっと黙って聞いていることしか出来なかった。
改めて考えさせられる。これからのこと、そして伊織の本心を。
その頃、匠も伊織もそれぞれ考え込んでいた。伊織は離れの部屋で、暗い部屋で悲しい表情をしていた。匠もまた外で雨の夜空を眺めていた。
その姿は美しくもあり、近寄りがたいミステリアスな雰囲気があった。
翌朝。茜と結羅は朝食を食べて、それぞれの学校に行く準備をする。
茜はいつもの通りに制服に着替えて、匠が運転する車の前まで顔を合わせた。
「「…………」」
お互いに黙り込む。昨晩のことがあったのだ、恐れられても仕方がないだろう。
人間の女性には残忍な光景だった。そのため避けられることは覚悟していた匠。
「どうする?」
断わられると思いながらも匠がそう聞いた。しかし茜は黙って、そのまま車の中に乗り込んできた。
目を大きく見開いて、驚く匠。一緒に行く気になったということか?
急いで運転席に移動する。茜は足を組みながら大人しく待っていた。
「……てっきり乗って来ないと思っていたが、いいのか?」
そうしたら茜はジッと匠の方を見る。
「……私は実際に見たことしか信じない。目をつぶっていたから、何も見ていないわ。もし見たとしても、自分で感じたことを信じるだけ」

