見た目はサルのような顔。タヌキの胴体。トラの手足を持ち、尾はヘビになっている。辞書に書かれた名は確か……。

「あれは鵺(ぬえ)よ!」

 茜が大きな声で叫ぶと、正体を見破られた鵺は形を変化していく。
 彼女の言った通り、その本体を現した。鵺は赤色の目を光らせて「ヒョーヒョー」と不気味な鳴き声を出していた。
 それを見た虎太郎は、なるほどと納得する。

『なるほど……奴は鵺だったか。あ奴は、かなりのひねくれもの。その上に謎の多いあやかしだ。人や物体に寄生して心を操ることが出来る。今までの事件はコイツが絡んでいたからこそ、ここまで人を操れたのだろう』
「そ、そんな!?」

 虎太郎の言葉に結羅は衝撃を受ける。黒石神社が絡んでいるのにも厄介なのに、鵺というあやかしまで関係しているとは。
 梨々子は完全に操られている状態なので表情一つ変えなかった。

『それに本来の玄武は、ワシらより年寄りのジジイだ。のんびりした性格だから、操られてやすかったのかもしれない。当主もそれなりの若僧だ。呪詛の力と合わされば、多数の人間を操れるほど強力になる』

 玄武とその当主を操った鵺は呪詛の力を使って、世間を騒がせたというわけか。
 鵺は「ヒョーヒョー」と鳴きながら目を赤く光らせる。
 そうしたら梨々子は、また手をかざず。三度目の攻撃をしてくる気だろう。
 今度は複数の水の渦巻きが出来るが、ガハッと梨々子は吐血してしまう。無理やり霊力を絞ってきたから限界が来たのだろうか。

「梨々子さん!? これ以上、やったら死んでしまいます」

 結羅は慌てて叫んで止める。その声は届かないのか、梨々子はニヤリと笑いながら手を上に向ける。