大きくなった姿に、ホッと胸を撫で下ろす結羅。
 だが、梨々子は自分の体力を無視して攻撃を続けようとしてくる。虎太郎は、強い風を操り反撃に出るが。
 周りの使用員達は、それに気づき、悲鳴が飛ぶ。それだけではない。
 その騒ぎに茜まで起きてしまい、部屋から出てきてしまう。

「ちょっと……何よ、これ!?」
「茜!?」

 この現状を見て、茜は驚いてしまう。結羅は妹に危険が及ぶと思い、慌てる。
 その時だった。夜空からポツポツと雨が降り出した。

「……雨?」

 ザーと雨が降り出すと、匠が茜の前に降りてきた。
 屋根の上で結羅と伊織の様子を伺っていたようだ。

「ねぇ、これはどういうこと!?」
「お前は部屋の中に入っていろ。危ないぞ!?」
「え、でも」

 茜は動揺しながら、チラッと梨々子を見る。彼女が呪詛のせいで正気を失ってしまったのを見て、驚いていた。
 しかし梨々子の肩に乗っている丸い物体が目に入る。茜にはそれが何か、はっきりと見えていた。

「あれ……何か見たことがあるわ。確か図書館の本で」
「えっ? 本当か?」

 その言葉に匠も驚く。まさか自分でも正体が分からなかったのに、彼女にそれが見えるとは。
 茜は必死に昔の記憶を辿っていく。確か、たまたま手に取った、あやかし辞典。
 何気に読んだ本だったが、いろんな種類のあやかしがあって気になったから覚えている。