梨々子は、そのまま女性の使用人に連れて行かれるが、結羅をギロッと睨みつけてきた。やっぱりウソ泣きだったようだ。
誰も居なくなると、部屋に居たはずの茜がひょこっと顔を出してくる。
「一体何があったの? お姉ちゃん。凄い騒ぎになっていたけど」
「ごめんね……茜。起こしちゃった?」
「ううん。それよりも何があったの? あの人に」
妹にどう説明しようと悩んでいると、渡り廊下の方から匠が歩いてきた。
そして結羅と茜の前に。
「伊織さんの様子は?」
「いつものことだ。そのうちに気が収まるだろう。それより今回のことだが」
「……分かっています。梨々子さんがワザとやったのですよね?」
弁解を言おうとしたのだろう。しかし結羅は理解していると告げる。
匠は目を大きく見開いた。ショックや絶望したのだと思ったのだろうか?
「……疑わないのか?」
「驚きましたが、あまりにも不自然でしたので。伊織さんは人間不信なのに、わざわざ騒ぎを起こすことをするとは思いません。むしろ嫌うはずです。それに、彼女に好意的には見えませんでしたし」
これは本当のことだ。結羅は伊織の性格を見た上で考え直した。
わざわざ自分から騒ぎを作るとは到底思えない。それで喜ぶとしたら、むしろ梨々子の方だろう。彼女の言っていたことを思い出す。
『無理なら、既成事実を作るまでですわ』と、確かにそう言った。
もしかしたら、それが狙いだとしたら?
結羅は不安になる。しかし、その考えは本当のことになった。
翌朝。何処からか話を聞いた梨々子の父親が朝早くに怒鳴り込みに来た。
「娘から泣きながら連絡がきた。ウチの可愛い梨々子を傷ものにしたことに、どう責任を取るつもりだ!?」
誰も居なくなると、部屋に居たはずの茜がひょこっと顔を出してくる。
「一体何があったの? お姉ちゃん。凄い騒ぎになっていたけど」
「ごめんね……茜。起こしちゃった?」
「ううん。それよりも何があったの? あの人に」
妹にどう説明しようと悩んでいると、渡り廊下の方から匠が歩いてきた。
そして結羅と茜の前に。
「伊織さんの様子は?」
「いつものことだ。そのうちに気が収まるだろう。それより今回のことだが」
「……分かっています。梨々子さんがワザとやったのですよね?」
弁解を言おうとしたのだろう。しかし結羅は理解していると告げる。
匠は目を大きく見開いた。ショックや絶望したのだと思ったのだろうか?
「……疑わないのか?」
「驚きましたが、あまりにも不自然でしたので。伊織さんは人間不信なのに、わざわざ騒ぎを起こすことをするとは思いません。むしろ嫌うはずです。それに、彼女に好意的には見えませんでしたし」
これは本当のことだ。結羅は伊織の性格を見た上で考え直した。
わざわざ自分から騒ぎを作るとは到底思えない。それで喜ぶとしたら、むしろ梨々子の方だろう。彼女の言っていたことを思い出す。
『無理なら、既成事実を作るまでですわ』と、確かにそう言った。
もしかしたら、それが狙いだとしたら?
結羅は不安になる。しかし、その考えは本当のことになった。
翌朝。何処からか話を聞いた梨々子の父親が朝早くに怒鳴り込みに来た。
「娘から泣きながら連絡がきた。ウチの可愛い梨々子を傷ものにしたことに、どう責任を取るつもりだ!?」

