「そうなの? 良かったじゃない」

 両親は茜に甘いから、別に珍しいことではない。それの何が問題あるのだろうか?
 そうしたら茜は大声を上げる。

「だから、それならお姉ちゃんにも、あげてよって言ったの。お姉ちゃんだって、来月の7月が19歳の誕生日だからって。そうしたら必要ないって、言ってきたのよ!? それが親のすること?」

(ああ、なるほど)

 納得する結羅。つまりは差別発言して茜を怒らしたのだろう。
 結羅にとったら、いつものことなので気にしないようにしていたが、姉が大好きな茜は我慢ならなかった。父親と母親は慌てて弁解しているが。

「茜。別に差別したわけではないだろう? お姉ちゃんはバイトをしているんだ。欲しいものがあれば、自分で買えばいい」
「そうよ、お姉ちゃんは、もう大学生なんだから。中学生の茜ちゃんとは立場が違うの」
「はっ? そういう問題ではないでしょ!? それに大学生と言いながら、お姉ちゃんには中学と高校生の時でもあげてなかったじゃない。そういうのは、やめてって言ったじゃん」

 変わらない両親の態度に茜がブチ切れる。結羅は慌てて止める。

「茜、落ち着いて。あなたの気持ちは分かったから」
「でも……」
「それだけでもお姉ちゃんは嬉しいわ」

 なるべく揉めさせたくない。両親は茜には優しい……その間は。
 そうしたら、その結羅と茜の態度に父親は腹を立てる。財布を取り出すと、バンッと5千円札をテーブルに叩きつけてくる。

「これで文句ないだろう!? まったく。どういう育て方をしたら親に向かって、こんな生意気な態度をとるようになるんだ?」