しばしの沈黙。王景殿は目を伏せたまま、何かをこらえるようにしていた。

やがて、ゆっくりと頭を下げた。

「……恐れ多いことでございますが、この身にてお役に立てるのであれば、喜んでお引き受けいたします。」

その答えに、景文は安堵の吐息を漏らし、私も静かに微笑んだ。

「ありがとうございます、王景殿。」

こうして、文翔には新たな“父”が与えられた。

――この子の人生が、確かな道を歩めますように。

「大変になりますね、王景殿。」

赤子を抱いた私がそう声をかけると、王景殿は顔をほころばせて笑った。

「なに、孫の面倒を見る爺になるわい。」

その言葉に、場が和やかな空気に包まれる。けれど、すかさず景文が口を挟んだ。

「……孫の世話では困ります。お父上。」

ぴしゃりと真面目な口調に、王景殿は一瞬目を丸くし、すぐに「いやあ、しかし。こんなに可愛くてはなぁ」と、まるで頑固親父のように頬を緩めた。