私は隣でそっと頷いた。

生まれたばかりのこの子は、すでに宿命を背負う立場にあるのだ。

「だが――」景文は続けた。

「皇子として育てるには、“養父”の存在が不可欠です。つまり、私に代わって日々の育成や儀式、初学の導きにあたる方を立てねばなりません。」

「……なるほど。」

王景殿は静かに頷き、視線を文翔に向けた。

「それほどの身分を持ちながら、乳母や女官任せにするわけにはいきません。文翔が皇子として立つには、血以上に“正しき導き”が必要です。」

景文の声は柔らかいが、どこかで震えているようにも思えた。

「その役目を、王景殿――あなたにお願いしたいのです。」

王景殿の目が、見開かれた。

「……わたくしが、殿下の養父に?」

「はい。あなた以上に、信頼できる人物はいない。あなたの教養、誠実さ、そして私にとっての“父”であったその背を、文翔にも見せてやってほしいのです。」