「そして何よりも、お前を“堂々と”俺の妻だと言える。」

「景文……」

ふたりでそっと額を合わせる。遠回りした分だけ、今の幸せが深く、愛おしい。

「じゃあ、お披露目は三日後か。……俺、今日から寝所に忍び込まなくて済むんだな。」

「ふふふ、そうね。」

「でも……忍び込んだあとのドキドキも、結構好きだった。」

「もう……っ!」

私は彼の胸を軽く叩いた。けれどその胸に、しっかりと寄りかかる。

――これは、運命に翻弄されながらも、ようやく辿り着いた“ふたりの婚礼”の始まり。

そして、婚礼が明日に迫った夜。

私は髪を解き、文をしたためながら静かな時間を過ごしていた。すると、控えめな扉を叩く音。

「誰ですか?」

扉を開けると、そこに立っていたのは――

「景文?」

見慣れた顔、けれどその装いはまるで違っていた。

深紅の正装、金の刺繍が浮かび上がる衣。

肩には皇族の証たる玉飾りの飾緒(かざりお)が揺れ、まさに“第四皇子”の姿。