「あなた様は、私が本当は陛下のご落胤だと、その首の刺青が何よりの証拠だと伝えた時――その刺青を、消そうとされた。」

王景殿の声は、穏やかながらも重かった。

えっ……⁉

刺青を、消そうとした……?

私は寝台の中で、目を見開きそうになるのを必死に堪える。

あの刺青は、皇族の血を引く者にだけ刻まれる証。それを――消す?

「それは苦痛を伴うことなのに……」

王景殿は、ふっと遠くを見るように語った。

「私のことを想うが余りでしょう。――この人生を、誰かの子としてではなく、“王景の子”として全うしたいと。」

静寂が流れた。

景文は、何も言わなかった。

だが、その沈黙こそが、答えだった。

「……今回も、同じではありませんか?」

「……」

「翠蘭様を想うあまり、あなた様は深く、深く――溺れていらっしゃる。」

景文の背中が、わずかに揺れた。

それが動揺か、あるいは否定の言葉を飲み込むためなのかは、わからない。