「宮殿では、噂が立っている。」

「なんと?」

「大臣が――後宮の妃に溺れていると。」

少しの沈黙の後、王景殿はちらりと寝台の方を見る。

私はまだ寝息を装いながら、内心で身体を強張らせていた。

すると――

「ふははっ。」

低く、含み笑いのような声が響いた。

景文が笑っている。

「……その通りですので、言わせておけばよろしい。」

まるで、誇らしげに。

「陛下が振り向かぬ妃に、俺が心を奪われた。民も朝廷も、好きなように騒げばいい。――俺は、翠蘭を手に入れたのですから。」

息が止まりそうになった。

寝たふりをしているのが、もう限界だった。

でも――その言葉だけは、心の奥深くに焼き付いた。

私は、愛されている。

誰かの代わりではなく。憐れみでも、同情でもない。

ひとりの男の、まっすぐで、誇り高い愛情で。

王景殿は深くため息をついた。